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週末にお礼、と約束をしとうとうその約束の日が来た。
個人的にはお礼でわざわざ外に出るのは申し訳なくもあるのだが、これはかすがさんのお礼であるので私は無理やり気にしないことにした。
自分のお礼は自分で。
そんなことわかってる。
だから今回は私も軽い気持ちで待ち合わせ場所であるとある店へ行った。




待ち合わせ丁度の時間に着くと既に二人がいた。
あまりよく知らない者同士だから気まずいとは思っていたけれど、かすがさんの社交性がいいのか結構仲良さそうに話していた。


「遅れてごめんなさいっ」

「名前・・・いつも5分前行動を心がけろと言っているだろう」

「うっ、ごめんなさい。
 長曾我部もごめん・・・」

「いやっ、俺は気にしてねえからよ!大丈夫だ!な?」


少し呆れたように溜息を吐くかすがさんと大丈夫だからと笑ってみせる長曾我部。
正反対の反応を見せた二人にさっきまで見ていた光景が嘘のように感じられたが、この二人は何かと気を見せ合うところを見せた。

甘いものということで入ったケーキ屋さんで、選ぶケーキも同じ。
ケーキも同じとなれば、選んだ紅茶の種類も同じ。
そして、二人が話してみれば二人とも私のことを犬みたいだと言ってきた。
失礼な話だとは思うけど、思い返してみれば長曾我部に一度私が犬だと言われたことがあった。
それにしてもかすがさんにも思われてたのはショックだけど。
・・・編集長の犬になってるくせに。

ちなみにこの後いじけた私を二人して笑ったのは言うまでもない話。


「二人は初対面なんだよね?」

「ああ、会うのは初めてだな」

「でも凄く仲良くない?」

「どっちも犬派だということだろう」

「犬・・・?」

『ほらっ』


同時に「ほらっ」と発した二人は、私を指さした。
誰が犬だっ!?
別に誰かに尻尾ふってる訳じゃないし、ご主人様とか言った事ないし。


「私のどこが犬なの」

「なんとなく犬っぽいな・・・」

「ああ、かすがさんと同じくだ」

「・・・・・・・・・」


結局この二人に言い返せないと悟った私は黙ってケーキを食べた。
かすがさんが絶対に連れて来いっていうから長曾我部に意地でも口止めをさせるかと思ってたんだけど、違うみたいだ。
一応心配していた身であったから気苦労がと自分で笑いそうになる。




「かすがさんも何考えてるんだか・・・」

「常に謙信様の事しか考えていない」


ケーキをかすがさんに御馳走になり、店を出たところで少し愚痴を溢すように、かすがさんにあてつけるように私は言った。
それでも帰ってくる言葉に何も言えなくなる。


「じゃあ今日はここで解散かー。
 締切あれだから私は帰ります、かすがさん御馳走様でした」

「ああ、ちゃんと締切守れよ」

「っ・・・極力頑張りますよーだ」

「じゃあ俺は今から用事があるから、じゃあな斎藤」

「じゃあ、また休み明けで」


何故か並んで手を振る二人に疑問を感じながらも仕事だ、仕事!と振り切った私は小走りで帰路についた。




  


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