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しばらく斎藤の勉強を見て、テストを迎え、テスト返却の今日を迎えた訳だが。
この前増えた仕事が忙しかったのか、相変わらず斎藤はぐっすりと寝ていた。
どこがばれないようにしているんだ、とは思ったが今は現代文の授業であいつ自身が点を取れる教科だから大丈夫なのかと納得する。
もう態度悪くてもいい教科があるなんて普通の奴に取っては羨ましい話だろうな。

そして斎藤は文系科目の合計は相当いいらしく個人的に教師から褒められていた。
まあそのことは俺には関係ないことだが。


ついに放課後を迎え、全教科を返された状況となった。
俺は俺で別に普通の点数だった訳だが、斎藤の理系は全て俺が教えた訳だ。
多少なりとも緊張というものが出てきた。


「長曾我部」

俺が名前を呼ぶ前に斎藤の方からわざわざ俺の方へ向かってきた。
教室で俺たちに何があったか知らない奴は何が起こるんだという好奇心の目などが向いている。
さすがに斎藤でも気付いたのか、俺を屋上まで行くかと言って俺もそれに黙った頷いた。





屋上に付いてみれば風が適度に吹いており、一瞬だが暑さを忘れることができた。


「それで、どうした?」

「うん、今日全部返って来たから報告仕様と思って」

「ほお、わざわざ報告するほど良かったってか?
 言ってみろ」


文系のやつだし理系科目は欠点さえ免れれば、あわよくばちょくちょく平均越えしてりゃいいと思ったんだが。
意外なことに全部平均を越えしていたらしい。
教えた俺ともあまり点は変わらなかった教科もあった。


「すげえな、やりゃできんじゃねえか」

「本当長曾我部のおかげだよ、ありがとね」

「まあいいってことよ・・・それであとは仕事か、頑張れよ」


苦に苦を重ねるのは大変だとは思う。
だが意外にも斎藤の顔に苦々しい表情はなかった。


「今回は締切間にあったら甘いものがもらえるからね」

「へえ、かすが・・・つう、担当さんか?」

「うん、かすがさんが。
 ああそうだ、かすがさんが私が補習にならなかったお礼をしたいって言ってたからできたら一緒に」

「んな気にするようなことしてねえからよー」


だから大丈夫だ、そう言うつもりだったのに。
気付けば斎藤の目はお願いだから来て、な感じになっている。


「訳有か?」

「かすがさんがお礼はなんとしてでもするって、かすがさんお菓子のおいしい店とかよく知ってて、たぶん甘いものでも奢ってもらえるんだろうけど」


何の意図かもわかっていないらしい斎藤は笑い、俺もつられて笑いとうとう行くと言った。
あの担当者はよくは知らねえが幸い甘いもんは嫌いじゃねえ。

久々にいいなと思った俺はちゃっかり楽しみな気持ちになっていたのだった。








  


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