08
いつの間にか1時間が経ったのか、長曾我部の携帯のタイマーが鳴る。
「どうだ、できたか?」
「うん、まあ一応」
ぶっちゃけだいぶひどかったと思う。
私にとって授業はネタ作りか、睡眠補給の時間でしかない。
故に私にとって授業とは苦痛も何もなく、ある意味極楽な時間なのだ・・・皆と違って真面目に受けてないから。
というわけで空白なんてあって当たり前だったが、長曾我部はパラパラとなんとなくページをみて確認し始めた。
確認してる間何故か正座してしまう私。
その理由はまあ言わずともわかるだろう、確認してる長曾我部がちょっと怖かったからだ。
根はいい人だとわかってる。
それでも間違いを見つけるたびにだと思うけど、ちらっと私の方を見るのだ。
そりゃ自然に正座になる。
一通り確認が終わったのか、長曾我部はお茶を飲んで私に向き直った。
「斎藤・・・よく進級できたなとしか言いようがないんだが。
ぶっちゃけうちの野郎共より危ねえだろ」
野郎共というのは長曾我部の取り巻きの人たちのことを指しているんだろう。
私としては私と比べられる人たちの方が可哀想なんだけどね、長曾我部とクラス一緒になった取り巻きの人たちの場合はいっつも長曾我部見つめて結構真面目に授業受けてるみたいだし。
「進級に関してはまあ態度がよく見られるようになってるからね、態度だけで30%はとれるんだよ」
「いやいや、斎藤いっつも寝てんじゃねえか」
「な、何でそれをっ」
一応ばれないように姿勢は正して寝てる。
しかも席替えでは一番後ろにしてもらったし・・・何故だ・・・。
「後ろでも横から見たらばればれだっての」
「・・・本当?」
「それに女子でもお前さん見つめてるやついたことあるぜ?」
「言っている意味がわからないんだけど」
所詮私の頭は飾り物なのか。
いまいちよく理解できない。
「噂で聞いたが女子に告白されたことあるんだろ?」
「・・・・・・・・・え?
あれ結局ドッキリとか嫌がらせとか、そういう類じゃないの?」
「・・・今まで何て言ってきた」
「えっと、私不器用だからそういうフリはできないみたいな?」
「ひでえ・・・」
素直に言ったら言ったでめちゃくちゃ冷たい目で見られてしまった。
いやいや、だってそんな告白なんて私の中ではフィクションでしかないもん。
しかも女子だよ。
「まあそれは今となっては仕方ないし、どっちにしようが私は誰かと付き合うだなんて甲斐性はないからいいけどさ。
というか、それを言うなら長曾我部だってひどい振り方してるんでしょ?
付き合ったらポイって、流行に疎い私でも聞いたことあるし」
「俺は来る者拒まずなだけだ・・・後別れるのは結局はお互いの価値観の違いだ」
価値観って。
私にとっては今までのイメージ的に飽きたとかそういうこと言うかと思ったから意外だった。
「意外と考えてるんだね」
「まあな、たまにはちゃんとした恋愛っつうのもいいと思うけどな。
いい縁が回ってこねえんだよ」
「黙らっしゃい、リア充が。
長曾我部ならどうせすぐ来るんじゃないの、悔しいけど」
「そうだな、斎藤の方がいい縁が回ってきそうだけどな」
どうせ世辞だとわかっていたので適当に受け流した。
その時だった。
インターホンが鳴った。
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