唇に愛を(より様/元親/戦国)
今日は七夕だと言って元親様が酒宴を開き、しばらく経って皆が寝静まった頃私は一人で乙姫と彦星だと例えられている二つの星を見ていた。
するとどこからか聞こえてくる聞き覚えのある足音。
「どうしたんだよ、こんなに遅くまで起きて」
振り向けば欠伸を噛み殺しながら私の横に座りはにかんだ元親様。
「星を見ていました」
「七夕だもんな、別にいつもと違ってるなんてそこまで思いはしねえが雰囲気が出るよな。
乙姫、彦星にも同情するぜ」
「本当ですね・・・乙姫は苦労してるんですね、一年に一度しか会えないわけですし」
「ん、苦労?」
元親様はまるで私が言った言葉に疑問を持っているように首を傾げる。
でも、私おかしなことは言ってないはずだ。
「だって一年に一度しか会えないんですよ、たとえ何回会っていたって間が空いてしまえば・・・その、二人で時を慣れる時間なんてありませんでしょうし」
「ん・・・・・・ああ。
つまり二人きりじゃ恥ずかしいってか」
「そうですよ、私なんて今でさえ元親様は正直言って体に毒ですのに」
「はっは、言われようはひでえがそれはいいことだろ。
というかだな、乙姫もそんな慣れがないと困るほどの扱い別に彦星から受けてねえと思うぜ。
お前さんが思うのは俺しか知らねえからだろ」
私は嫁入りはまだ元親様の所でしか行っていない。
というか、これから先離縁しようとなんて一切思ってない。
そんな訳で確かに私は他の男性のことなんて知らない。
振り返って見て頷いてみると元親様はおかしそうに、そして嬉しそうに笑った。
「そりゃいい。
俺ほどまでに嫁に執着してる奴はそういないと思うぜ?」
「えっ・・・え、え?」
「まあまずお前さんが恥ずかしがりすぎだってこともあると思うけどな」
そう言ってさらに口角を上げ、私の肩に手を回し頬に唇を押し当てた。
その唇から頬に移る熱に体は力が入ってしまう。
更には唇が押し当てられたのは一か所だというのに顔全体が熱くなってくる。
「元親様!そのようなことは心の準備もせぬままにしないでくださいませ!」
「まあまあそう言うなって。
とにかくどちらにせよ慣れたって慣れなくたって愛してんだからいいんだよ」
「っ―・・・」
元親様の言葉に言葉を紡げなくなるのは一体何度目なんだろう。
元親様のあの唇から発せられる熱、言葉は私の呼吸でさえ止めてしまう。
きっと私は乙姫のように一年に一度しか会えないという状況でも、今のように毎日会って愛されるという状況でも・・・どちらにせよ、元親様の愛にまともな顔をして耐えられる訳がないんだ。
唇に愛を(大好きな人の唇から今日もまた私はいろんな形の愛を貰う)
(大好きな人へ唇から今日もまた俺はいろんな形で愛を紡ぐ)
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より様のリクエストでした!
なんか私として久々にへタレじゃない元親さんかいた気がします笑
楽しんでいただけたら幸いです、ありがとうございました!
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