5月に入ろうとすると一年のだいたいの奴は本入部を済ませていた。
そして、我等が剣道部はというと無事部員を確保できた。
男女合わせて20名ぐらいだ・・・まあ女子は一人しかいないんだけどな。


俺のクラスの委員長田村名前、こいつが唯一の女子部員だった。


入らない奴の理由は簡単にわかる。
そりゃ汗くせえし、練習だって大変だ。
並みの部活ではないからほとんど毎日時間は取られる。

それでも入ってくる奴はいるんだが女子一人で入るのにはそれなりの覚悟というものもあるだろう。
上の学年がいるといっても田村が三年になれば女子部員は一人の可能性だってある。
危ないところだろう。


そんな訳で風変わりな田村は絶賛理にマンツーマン指導されていた。
剣道が好きなのもあると思うが理が好きなのもあるのだろう・・・凄いいい笑顔していた。
この先理が休んだとしたら代わりに教える奴だいぶ大変だろうなとなんとなく笑えてしまった。
その笑いに気が付いたのか田村ではなく理が振り向いた。

「どうしたの、伊達君?」
「いや、honeyは女にももてんだと思ってな。
 俺が教えてやってた時より随分嬉しそうじゃねえか、なあ田村?」
「へ、あ、私ですか?」

まさか自分が笑われていると思ってなかったのか大きく反応している。
理の方も多少の驚きを見せるが田村の反応が格別に大きかった。

「嬉しそう・・・なんですかね?」
「ああ、honeyが大好きだなほんと」
「え、あ、はい。
 そうですけど」
「ちょっ、伊達君も田村さんもそんな、ね?」
「これじゃhoneyもやすやすと元親と結婚できなくなっちまうな」
「伊達君!!」

元親、というkeywordに反応したのかすっかり顔を赤らめてしまい、少し怒ったような表情をしながら思いっきり平手打ちされた。
手を打ってからはっとした顔になり、俺に謝る理。
そんな様子を田村が見て、ぽかんとなりながらも一瞬切なげにこちらを見た。


**********



「とにかく元親の事を絶対に出さないこと、いいね?」

部活が終わればそうそうに理に怒鳴るのに近い感じで叫ばれた。
怒ってると思ったがどうやら恥ずかしかったらしい。
顔が未だに元親に反応するだけで赤くなっている。

「understand.
 それでhoney、最近元親とどうなんだよ?」
「えっ・・・ま、まあそれなりに」
「どこまで行ったんだよ?」
「修学旅行でイギリスに行ったのが一番遠い距離かな?」
「いや、そうじゃなくてだな・・・」


相変わらずだった。
天然が多少入ってるとは知っていながらもこんな調子だ。
何を言ってるのか意味がわからないという顔をしているし。

「あいつとsexしねえのか?」
「なっ、破廉恥な・・・」
「で、どうなんだ?」

いろいろ相談乗ってやっただろうと弱みを掴んでみれば、理はしばらく黙って恥ずかしそうに口を開いた。

「・・・い、一回だけ・・・・・・」
「おいおい、嘘だろ」

意外だった。
付き合い始めてもう5年経つわけだ。
元親が高3まで手を出していなかったにしてもそれから3年ちょいからは自由だったはずだ。

「そんなこと言われたって。
 むこうもこっちも忙しいし、元親だってさ・・・いろいろあるんだよ、きっと」

元親が手を出さない理由がわからなかった。
あいつはもう見てられないほどに惚れて、俺から理を幸せにすると約束して取っていった訳だ。
しかもそんな我慢できる奴だとは思えない。

「今すぐ抱かれに行って来い、honey!!」
「え、え、え、え?」
「元親の所に行きやがれっ!!」
「は、はいっ!」


勢いで道場を出て行った理を見送った訳だが・・・。
相変わらず俺も甘いな。
好きだった女に今でもこうやって未練たらたらしくなってるの隠して無理矢理尽くしてんだから。





  


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