「いいか、名前。
そういうことは男からいうもんだぜ?」
「守る、守らないはそんなこと関係ないです」
「・・・仕方ねえな。
アンタのことも約束も守ってみせる」
先生の手が私の頬を寄せた時だった。
「まったく綺麗な愛だね。
二人には本当感動するよ」
パンパンパンと鳴る拍手とともに、屋上へ入ってきた成実さん。
「ところで名前ちゃん、もう一度聞いていいかな。
うちの政宗とはどんな関係なの?」
少し前の私なら目を逸らしてしまっていたのかもしれない。
でも、今こうやって先生を守ると宣言した以上後ろに引く身なんてない。
「将来を誓い合った仲です」
私の言葉に成実さんが少し目を丸くしたのが見えた。
しかし、その途端冷たい目を向けられた。
「へえ・・・じゃあ梵の夢は?」
「先生は私が必ず守ります。
成実さんが言いたいなら言えばいい・・・それでも私は学校側になんて負けない。
先生が教師の立場を危うするなら私が退学でもなんでもしてみせます」
「なんでそこまで梵のために・・・本当にできる?」
「できるに決まってるじゃないですか。
先生のこと好きなんですから」
たとえいくら質問されたって、責められたって私は先生を諦めきれない。
もう諦めるなんて、先生に嫌われて捨てられない以上無理・・・いや、嫌われたって捨てられたって先生のことずっと諦められない。
私のこの体が、心が・・・そうなっている。
「・・・じゃあ合格」
「え?」
さっきとは打って変わった態度。
冷たい目なんて全然向けられていないし、むしろさっきまで本当に向けられていたのかという感じ。
「梵ね、何かと不器用な男なんだよ。
だから半端な覚悟しかないなら切り捨てるつもりだった。
でも合格。
幸せにしてあげてね」
「は、はいっ!」
認められた・・・?
その嬉しさと、安心したので力がふっと抜けて座り込んでしまった。
「名前!!」
先生は私のもとに駆け寄ったついでに成実さんを殴っていたけれど、
それはまあ・・・見ていないことにしておこう。
「先生、私先生のこと必ず幸せにしてみせます」
「・・・馬鹿!だから言ってんだろそういうのは男からだって。
幸せにしてやる、だから俺についてこい」
「はい!
先生大好きです!」
ふっと先生が笑ったのと、同時に唇に柔らかいものが感じた。
この瞬間を私は忘れることはないだろう。
「これからも俺を愛せ。
一生俺だけに愛を誓え」
耳元で溶けたそんな先生の甘い声にこくこくと頷きながら誓った。
”一生伊達政宗を愛する”
と。
恥ずかしながらも口に出してみれば私の顔はすぐに先生の胸に埋もれた。
本当に良かった。
本当に、本当に良かった。
ぬくもりに体を預け、ただ幸せを感じた。
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