『別れてください』


確かに名前はそう言った。
他でもない俺に。
俺も二人のこれからを考えれば、別れたほうがいいのかとも考えたことはあった。
それでも今までできずに距離を置こうとも、現状を維持してきた。


「Why・・・?
 俺のこと嫌いになっちまったのか?」
「そんなことは絶対にありません」
「じゃあ何でだよ!?」

以外にも冷静な名前にどういった態度を取ればいいのかわからなくなる。
今は言葉を聞くしかできない。

「好きだからです、大好きだからです!
 伊達政宗さん!」

名前が初めて呼ぶ自分のフルネームに反応し、名前が再び深呼吸をする横で俺も気持ちを整える。

「私と・・・私と結婚してください」
「名前・・・」


名前から出たのはまさかのproposeの言葉だった。
結婚・・・。

「はあああ!?」
「ちょ、先生!?」

慌てて名前の肩を掴み、揺らしつつ本意を確認する。
だけど何も嘘はないらしく・・・まああの短い言葉で嘘とか言う方が無理かもしれねえが。

「Shit!どうしてそんなこと先に言うんだよ!
 というかどうしてそうなったのか説明しろ!」

未だ現状を全て把握していない俺に名前は笑う。

「先生のこと信じてます。
 私の勝手な思い込みかもしれないけれど、先生が私との未来を望んでくれるなら私は今は我慢します」
「名前・・・思い込みなんかじゃねえよ。
 俺だって名前がいるなら何もいらねえよ」

一歩差がって手を取り、膝を付ける。
今度は名前が状況についていけていないという顔をするが、お構いなしに掌に口付けを落とす。



「I can't live without you.(アンタなしじゃもう生きられない)
 俺と結婚してくれ」



見上げてみれば名前赤い顔。
それは予想通りだったが、落ちてきた雫に目を疑った。

「何泣いてんだよ」
「だって、ひっく・・・嬉しくて、本当に嬉しくて・・うぅっ」
「嬉しいんだったら笑え you see?」
「だって、だって・・先生の、馬鹿っ、大好きですっ」

手を引き、抱き寄せればすぐに名前の腕が首に伸びた。
今までこんなに強く抱きつかれたことはあっただろうか・・・いや、きっとない。

「ここまで想わされるなんてな。
 ・・・だが、俺は別れねえぜ?」
「へ?」
「名前に何かあるなら俺が守る。
 名前がいるならもう何もいらねえよ」

そこで名前は初めて困った顔を見せた。
さっきまではっきり物言ってたくせに・・・。

「私先生が家の事業けって教師になったとき聞きました」
「へえ」
「それを私が無にしてしまうなら死んだほうがマシです。
 だから何もいらないとは言わないでください」
「アンタ本当に名前・・・なんだよな?」
「なんでそこで疑うんですか!
 でも、それなら・・・私がこの身をかけて先生を守ります」


離れていた分こんなに頼もしくなったのか。
少し寂しくは思うが、微笑ましい。

それでも笑ってみせると、むうと口を尖らせる名前にどこか安心した。





  


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