なんとなくだけど・・・。
先生の態度が少し変わったっていうのは気づいていた。
たぶん成実さんと先生が会ってから。

距離を置かれてしまったような気がする。
今までのフェイクとか、そういうのじゃなくて、一線引かれてしまったような。

だから、本気で先生のことを考えようと決心した。
独断だけど。
偏見だけど。
先生にとって何が一番大切なのか。
先生のこと信じられるからこそ、出せる答えを。



**********



「今日から二日間勝負だー!!」
『おう!!!!』

柄にもなく委員長をしてきたけれど、なんやかんやで半年以上が経った。
半年経つともうなりきっているというわけではないけれど、雰囲気だけは掴めたような気がする。


「名前!もう開店だよ!!」

クラスでも気分が高揚している子が何人もいる。
私もその一人なわけだけど。
それでも私がこのクラスの長なんだからと、気を引き締める。

「田村・・・それ看板逆」

クラスの看板付けた途端に逆向きだったのか、呆れながら副委員長に指摘されてしまった。
もうね、なんだろうねこの空回りぶり。
いっそ副委員長が委員長やってりゃ良かったのに・・・、なんてちょっぴり拗ねてしまう。

「ま、気にすんなよ」
「ほらほらkitten・・・show timeだ!」

先生がそう言い、指をパチンと鳴らした瞬間にチャイムが鳴り人が入ってきた。
副委員長の慰めの言葉が先生のおかげで役目を果たせなかったようでちょっと申し訳なかった気がする。
だけど、何故か副委員長むっと先生を睨んで、先生がニヤニヤと笑っていて・・・そのあいだでなんか言う勇気なんてなかった。
だから、ごめんとだけ言って接客の方へ勤しんだ。












『いらっしゃいませご主人様〜』

『殿っ!よくぞご無事で!!』


やっと休憩の時間に入り、少し遠くから中の様子を覗く。
先程から我がクラスが開く主従喫茶では濃いキャラの言葉が投げ通う。
まあ集客もそれなりのもので黒字になりそうな勢いだ。

「これで重荷が降りたかな?」
「kitten頑張ってたもんな」
「せ、先生!?」

驚いた。
奥に引っ込んでいるのは今のところ私だけだと思ってたから。


「・・・お疲れ様です」
「ああ、そっちこそお疲れさん」

ちなみに今先生ギャルソンの格好をしていて、ネクタイがとっても似合ってらっしゃる。
それにしても・・・少し気まずい。
先生のこと確かに好きだけど、好きで仕方ないんだけど。
・・・距離置かれたってわかったから。
その分どう接したら良いのかわからなくて。
昨日はなんとか気付かないフリしたけれど・・・結局顔引きつらせたとこ見られちゃったから。


「そうだ、kittenに特別に給仕してやる。
 コーヒー、紅茶、grape juiceどれがいい?」
「え、え、えっとじゃあぶどうジュースで」
「I sat up straight.」

いきなりの英語に戸惑いながらも、先生がわざわざ用意してくれたぶどうジュースを受け取る。

「Even distance cannot keep us apart.(離れたってずっと一緒だ、離さない)
 However I couldn't understand why my chest felt so tight.(なのに何でこんなに胸が痛いもんか・・・)」
「ちょっ、英語が、わかりませんって!」
「言葉はわからなくていい、ただ気持ちはわかれ」
「えっ、え?」

そんなこと言われても英語は突然言われたってわからないのに。
だけど、気持ちをわかれというなら、私だって伝えたいことがある。

「先生、明日全てが終わったら言いたいことがあります」
「・・・Okey, 終わったら屋上に来い」
「・・・わかりました」

後ろ手で手を振った先生に胸をおさえて軽く会釈した。
やっぱり気持ちの整理はまだつけられていないのだろうか。

頭ではわかっているというのに、涙が出そうになった。





  


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