彼女が何か隠しているのは前々から感づいてはいた。
「・・・・・・成実、てめえ名前に何をした?」
「え、何俺?
俺は心当たりはないけどな〜」
「ならさっきのアイツの態度はどう説明しやがる」
怒鳴るように声を荒げれば、成実がため息をひとつ零すところが見えた。
心当たりがあるのをわざと出しているぐらいの行動だ。
さすがにイラついてくるものがある。
「何をした?」
「俺はねえ、まあ言ってしまえば今のままだと梵が教師できなくなるって言ったよ?
それは当たり前のことであって、俺としてはおかしなことを言ったつもりはないけど」
「・・・」
成実に言われたことに何も間違いはない。
むしろ正論だ。
そのため何も言い返すことができなかった。
「政宗は夢とあの子、どちらを取るの?
でも夢を失った時点であの子とはお別れになるかもしれないけどね」
「どういうことだ・・・?」
「世間じゃ生徒に手出した淫乱教師、それを背負う覚悟はできてるのかってこと」
俺の名誉が悪くなれば、そりゃ名前にもそれなりに悪影響を及ぼすかもしれない。
そうなると名前なら自分の悪名ばかり気にして、俺に気を使って離れていくんだろうな。
そして、自然消滅。
流れはよく考えなくてもわかる。
愛があるとか、ないとか。
そんなこと関係なく・・・起こりうる事態。
もしも起こってしまったら間違いなく俺は彼女を守ることができない。
俺がいる限り消せない苦しみを背負わせるかもしれない。
・・・俺が、泣かせてしまうのか?
守ってやりたい、大事にしてやりたい・・・そう思った女を、自分が原因で泣かせてしまうのか?
「俺は愛の力を信じてるよ。
じゃあ政宗には挨拶しにきただけだし・・・用事があるのは小十郎だから、行こっか小十郎」
「失礼いたします・・・」
終始黙っていた小十郎にも成実と同じような考えがあったのだろうか。
心配そうに俺を見ていたが、心配をかけていたのは俺か。
「俺って奴は本当こういうのには弱いな」
自分が思ってたよりも非常な事態には弱いみたいだった。
名前をどうしたら守れるのか、考えれば考えるほど答えは俺にとっては悪い方向へ進むばかりだった。
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