もうひとつ角を曲がれば先生がいる−・・・そう思って勝手に緩んでしまう頬を抑えながら歩いていたら私の携帯が鳴った。
「あれ先生?」
出てみれば当たり前なのだけれど先生。
でも知らない男性の声が聞こえてきたりする。
「もしもし先生ですか?」
『kittenか、悪い・・・今日は無理になっちまった。
また今度埋め合わせするから悪い』
「え、あ・・・はい、そうですか、わかりました」
その時だった。
「もー、梵、何でそこまで落ち込むの!
地元にだって可愛い女の子はいるんだからさっ、ね!」
さっき先生の電話からなんとなく聞こえてきた男性の声。
角から覗いてみると先生とどことなく顔が似ている気がする。
というか地元ということは先生実家に帰ったりするのかな?
『kitten、またすぐに電話するから待ってくれ』
「はい・・・先生実家に帰られるのですか?」
『ああ、盆までは実家にいる。
着いたら電話するから出れるようにしとけ』
「はい、ではまた・・・」
ちょうど切れたところで先生たちが車に乗り込もうとしているところが見えた。
やっぱり先生お金持ちの坊ちゃんらしいし、お家のことが大変だったりするんだろうか。
好きな人のことながらあんまりわかってない自分に少し寂しくなった。
「ほら梵!乗り込む!
女ならあっちでいくらでも紹介してやるから!ほらほら!」
そして耳の片隅に聞こえてきた言葉に血の気が引いた。
え・・・。
先生のことは信じている。
でも正直先生が私以外の女の人を選んでも納得できる。
そんな私には今の言葉じゃ先生本人から冗談だと言ってでもくれないと嘘だと信じきれない。
先生が傍にいないと不安で仕方ない。
「先生・・・」
車が出て行くところを見て何だか泣きそうになった。
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