朝目が覚めると小十郎の顔がすぐ前にあった。

「おはようございます、政宗様」
「・・・・・・うわ、小十郎!な、何してんだ!」
「いえ、なかなか起きませんでしたので。
 あと成実がこちらに」
「成実、だと」

成実といえば、生憎だがあの従兄弟の成実しか思い浮かばないんだが。
そうだと小十郎の顔も物語っている。

「何しに来やがった?」
「残念ですが小十郎にもわかりませぬ」
「Shit!仕方ねえな、すぐに行くから」

下がってろ、そう言おうとした時だった。
襖が勢いよく開いた。
右目に映る男。

「梵!おひさー!!」
「うわ・・・」

高いテンションにでけえ声。
間違いねえ、こいつは俺のよく知っている伊達成実だ。


「それよりもどうしてここにいる?
 俺は今日は構ってやらねえぞ」
「ふふーん、今日は梵の親父さんからの命令だから絶対に連れて帰るよ。
 へへ、ざまああ!」

・・・どうしてこいつが従兄弟なんだと何回考えたことだろう。
今日はkittenとdateだということを考えてみてもどうも腹が立って仕方がない。

「俺は帰らねえぞ。
 だいたい親父とは盆は帰るっていう約束だ、まだ8月入ったばっかだ」
「それは梵が約束守ったらの話。
 なんか夏休み入ってから浮かれてたのか知らないけど1週間に1回は親父さんに電話する約束破ったでしょ?
 だから本日強制送還だよ」

強制送還・・・つまり家に帰れと?

「小十郎んとこに住む時にちゃんと約束したでしょ。
 まあ今までは律儀に守ってたみたいだけど」
「おい、小十郎、何も連絡してなかったのか!?」
「無駄無駄。
 親父さんが聞きたかったのは梵の声なんだから」
「いや、でも今日は−」
「よし、さっさと支度して!ほらほら!」


事情を聞き終わればそろそろ約束の時間。
名前には家に来るように言っているからもうすぐ来るだろう。
来た時点でこの家は空かもしれねえが・・・。


「成実、今日は俺は忙しい」
「そかそかー、彼女とデート?」
「っ」
「ふーん、へー、人にでっかいプレッシャーやら押し付けておいて梵はデートですか。 へーへー」
「・・・・・・・わかった、帰ってやる」


この男。
未だに俺がしたことを根に持っているらしい。

『俺の代わりに頼む』

そう言って親父の跡を継いでくれと言ったのは高校卒業してすぐだった。
長男である俺は本当は教師なんてやらずに親父の無駄にでけえ会社を継ぐはずだった。
でもそれを拒むことは親父に猛反対されて、結局弟以外の代わりを立てるなら考えてやると言われた。
結果成実に俺がその気になるまでという条件を付けて次期の社長の座を渡した。


「ただし電話させろ、今回ばかりは嫌われたら本気でアンタを恨む you see?」
「ああ、大丈夫だ」


ひとつため息をつきながら名前に詫びを入れようと携帯を取り出した。





  


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