『月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也』


松尾芭蕉とかいう奴はよく言ったもんだと思う。
いや、これは李白の書いてたやつの引用だったか・・・。
それは今となってはどうでもいい。

とにかく月日はあっという間に過ぎていくもんだ。
俺が高校を卒業してあっという間に5年。
好きな女に振られてからはあっという間に6年。
今となってまだ何もできなかったことを後悔している訳ではないが、未練はあるといえば多少あった。
それでも何かをするつもりはなかった。
でも、何故かまた昔のように一緒にいたくなったのか、
俺は無意識に高校に戻っていた。





「伊達君、ひさしぶりー」

卒業した高校に教師として戻り、初日の今日。
恩師であり、学生当時恋をしていた女に声を掛けられた。

「そうでもないだろ、会ったのは1か月前ぐらいだろ」
「そうだっけ?
 でも学校で会うのは凄く懐かしい気がするよ、おかえり」
「honeyは相変わらずみてえだな」


理と会ったのはまあ1か月ぶりだった。
別にしょっちゅう会う関係である訳ではなくあまり会わないということ自体が結構当たり前な気もして懐かしさが甦ってくる。
そして理の性格は学生当時とはあまり変わらないように思える。

「私としては前よりはもうちょっと大人しくなったんじゃないかと思うけどね?」
「今のところではな」
「うわ、ひどい・・・まあいいや、ほら職員室行こ。
 時間も時間だしさ」
「I see.」

腕を引っ張られ、当時より強くなった力に苦笑してしまったのは絶対に言えない話だった。
きっと今でも頑張ってるんだろう。
結果だって残してる。
俺らの代から変わらずに毎年全国大会に出場してる。
小十郎も顧問だが、こいつも顧問な訳だ。
それなりに苦労もしてんだろうな。


「ほら、入った入った」
「おう・・・・・・」

目に入ったのは何度も怒られに来た職員室。
馴染みの深い教師たち。


「お久しぶりです、伊達政宗です」

当時まともに敬語なんて話したことがなかった分、自分の中に違和感があった。
ちんけなpridも今となっては馬鹿に思えてくる。

小十郎に対しても今日からはある程度敬語使わなきゃならねえのは不快感に近いものもある。
それでも今のところは先輩教師な訳だ、仕方ねえ。
まあ此処に慣れてしまえば、敬語なんて一切なくなるかもなとも思う。


「よろしくお願いします」


頭を下げると湧いてくる拍手。
そして、嬉し涙を流した小十郎。
小十郎に対して言いてえことはあるが、それはぐっと堪えた。



4月、俺の教師生活が始まった。
別に理の傍にいたかっただけが教師になった理由じゃないということをはっきり証明してやる、
そう心に誓った。




    


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