6月に入ってすぐの土曜日。
その日は部活がなかった。
それは勿論、訳有で。
斎藤先生の結婚式の日だったから。
伊達先生が何をしてくれたのかはよくは知らないけど私も運よく先生の結婚式に呼んでもらえることになり。
朝から先生のウエディングドレスが拝めるんだとテンションが上がっていた。
たしかに寂しいってことはある。
憧れの人がちょっとでも家庭に時間を割くことになるんだから。
でもその憧れの人が幸せだっていうことに負の感情は全くない。
伊達先生に用意された青地のパーティドレスを着て家で待ってるとインターホンが鳴った。
先生が迎え手に来てくれと言ってたので急いで玄関を出ると片倉先生が見えた。
「おはようございます」
「おう、なかなか似合ってんじゃねえか田村」
「伊達先生が選んでくれましたから。
・・・あれ、伊達先生はいらっしゃらないのですか?」
「政宗様は先に行ってる。
まあいいだろ、早く乗れ」
「はい」
片倉先生の車に乗せられて走ること約30分。
斎藤先生や伊達先生の話を聞いた。
どちらも昔から変わっていないらしく、片倉先生が私を見るとお前もきっとかわらないんだろうな、と言って笑った。
「らしさって必要だと思いますよ?」
「まあそうだろうな。
それにしても理とたまに重なっちまうな、妹って言っても不思議じゃねえ」
「褒めても何も出ませんよ、嬉しいですけど」
「別に褒めてるつもりでもねえんだがな・・・。
まあそんな馬鹿みたいに正直なところはそっくりだ。
・・・うっし、着いたぞ。俺は車止めてくるから先行ってろ」
綺麗な教会について車を降りると受付の所で立っている伊達先生を見つけた。
知り合いはあまりいなさそうなので先生の所に走っていこうとすると、ヒールがぶれてこけそうになった。
「っと、危ねえな」
こけなかったと思って顔を上げると呆れたように笑っている先生が見えた。
「すいません」
「気にすんな。
それで小十郎は?」
「車を止めに行かれました」
「似合ってんじゃねえか、そのドレス」
先生の言葉が不意で、本当に不意で。
つい固まってしまった。
お世辞だとはわかってるけど、わかってるつもりだったけど嬉しくて。
「あ、ありがとうございます、先生が選んでくださったわけですし。
でも服に着せられてる感が出て申し訳ないというか、なんというか・・・」
「大丈夫だ、ちゃんと似合ってるから」
褒めてくれて髪に手を伸ばされそうになったその時だった。
「あれー。竜の旦那じゃん!」
「政宗殿!!」
髪が明るいオレンジの色のお兄さんと茶髪のお兄さんがやってきた。
共通点と言えば二人とも凄く顔が整ってるところだろうか。
「久しぶりだな!」
「そうでござるな、それでこの女子は?」
「可愛い子だね、鬼の旦那の知り合いとかー?」
「あ、私田村です。
斎藤先生の教え子です」
そう言うとオレンジの髪のお兄さんが笑った。
「じゃあ俺様たちの後輩って訳だね〜。
よろしく、俺様猿飛佐助。
んでこっちが真田幸村、竜の旦那の同級生だよ」
「よろしくおねがいしますっ」
「こちらこそ今後ともお見知りおきをっ!」
お前らは相変わらずだなと先生が笑っていたけど私はなんだか片倉先生の言っていたことが納得できたような気がした。
なんていうか、個性豊かというか・・・。
「下の名前はなんていうの〜?」
「あ、名前です」
「そっか、名前ちゃんね。
それで竜の旦那とはどんな御関係で?」
関係・・・って言われても。
ただの教え子でしかないよね。
「おい、猿!
kittenは渡すつもりがねえからな」
私に代わって答えた先生が首に腕を巻いた。
体密着してるから凄い恥ずかしいんだけどね・・・うん。
「はいはい、竜の旦那も惚れた女の子にはとことん尽くすみたいだね、ほんと。
不憫というか・・・泣けるね」
「shit!」
まあたしかに斎藤先生のことがあるんだもん。
私も不憫で泣けるっちゃ泣ける。
「そろそろ式が始まるでござるよ!!」
幸村さんがそう言って私たち四人は急いで中に入った。
中に入るとそれこそもう知らない人ばっかりだった。
でも前にいる元親さんが見えた。
しばらくして、先生が先生のお父さんに連れられてヴァージンロードを歩いてくるのが見えて、その先生が凄く綺麗で感動した。
いつも綺麗なんだけど・・・何割か増しみたいな感じで。
伊達先生もその斎藤先生に見とれていた。
好きだもんね、仕方ないか。
斎藤先生が元親さんの前まで着くと嬉しそうに笑っていた。
幸せなんだなって思うと私まで嬉しくなった。
伊達先生の方を見あの二人だもんなというように笑っていた。
そして結婚式と言えばこれだろ!と言われる誓いのキスが始まろうとした時。
私の目は何故か伊達先生によって塞がれた。
頭をぶんぶん振って手を振りほどこうにも結局最後まで見れなかった。
外されたのは終わってからということだ。
「何で目隠ししたんですか!」
「kittenの教育に悪いだろうが。
そんな教育を受けたけりゃ俺が教えてやるから」
そんな風にかわされたけど・・・。
納得がいかなくなって式が終わった後に先生にもう一度誓いのキスやってくださいと言ってみたけど駄目だと言われて結局無念に終わってしまった。
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