何故か最近田村に避けられていた。
心当たりはあると言えばあるけれど。
彼女は生徒であるし、大事な相談相手だ。
手は出していない。
でもよく考えてみろと言われて考えたら心当たりというものはあった。
あの夜に悪ノリしたこともあったし、帰りに抱きしめてしまった。
自分でもなんで抱きしめてしまったのかはわからない。
でも、何故か無性に抱きしめたくなった。
それで彼女の腕も回されて凄く嬉しくなってしまった。
今まで付き合ってた女とはどこか違うと思ってしまった。
それが原因なら謝るべきなんだろうけど、謝るのも前に顔もあまり合わせない。
だから気まずくはないんだがやりにくくなっていた。
そんな俺たちの関係を心配したのか、声を掛けたのは理だった。
「伊達君、最近田村さんとはどうなの?」
「どうって・・・完全に避けられてるぜ」
「心当たりは?」
「あるっちゃある。
それが原因なら謝る気もあるんだけどな、顔も合わせてくれねえんだよ」
「・・・ちゃんと謝れ!
言い訳して結果的に逃げてんだろうが、あの子だってやりにくいんだからよ!」
「お、おう」
久々に理の怒ったような声を聞いてしまい、悪かったなという罪悪感がさらに込み上げてきた。
やっぱりちゃんとケリ付けないとな。
「明日部活が終わったら話す」
「わかった、じゃあ部活午前で終わらせてあげるから」
ひとつ貸しよ、と言って笑った理。
明日は休みなわけだし逃げるにも逃げられねえからな。
「ま、伊達君も自覚とか持たないとね」
「あ?」
「田村さん可愛いんだから取られちゃうよ」
あいつが可愛いから取られる・・・?
というか、俺が自覚って。
「俺が田村を好きだと?」
「そうじゃないの?
一緒にいると凄く楽しそう」
「・・・どうなんだろうな」
恋の自覚症状と言えば、一日中相手のことを考えてる、会うだけで嬉しくなる、目があったら笑ってしまう・・・そんなところか。
よく考えてみれば全部当てはまってるな。
たしかにkittenと思ってるところはある。
可愛いとは思う。
「ま、自覚したらhoneyにも報告してやるよ」
「うん、あの子を泣かせたら私が承知しないけどね」
「I see.」
あまり日が立っていなくても田村と理の間には何か確立しているらしい。
元々似た者同士かも知れねえからな。
「ところでhoneyは元親とちゃんとできたのか?」
「できた・・・っていうか、うん、まあ。
プロポーズもされたよ、結婚してくれって言われた」
「そろそろJunebrideだからな、思い切ったな。
congratulation!」
「あ、ありがと」
元親も言ってくれりゃいいのに。
こういうところでまだ俺が気にしてると思ってんだろうな。
「勿論結婚式には出るからな」
「呼ぶつもりだったしね」
「kittenも連れてやってもいいか」
「あの子なら・・・いいかなー」
大好きな理が結婚するとなってもあいつの場合はちょっと寂しくなったって幸せになってくれることが嬉しいんだろうな。
元親のスピーチにゃ、過去の黒歴史でも入れてやるか・・・そう誓った5月の夜だった。
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