次の日から正直伊達先生をちゃんと見れなかった。
昨日の今日・・・抱きしめられて私も抱きしめ返しちゃって・・・・・・。

教師だってわかってるし、向こうにその気がないのも火を見るよりも明らかなことだ。
私だってそんな気はさらさらないし・・・・・・。
何て事をしちゃったんだろう。

私が一人でこんなに恥ずかしがってるということもわかってるけれども!!

どうしちゃったんだ。


「田村さん?」
「ひゃあっ!?」

朝練が終わり、一人道場の裏で座っていたら斎藤先生に声を掛けられた。
咄嗟のことで変な声を出してしまったが・・・なんでこう斎藤先生の時っていっつもタイミングが悪いんだろう。

「なんか今日落ち着きないけどどうかした?」
「え、あ、あ、えーっと・・・そうですね、落ち着きないですよね」
「伊達君に何かされたとか?」
「うっ・・・・・・」
「まさか本当に!?」

何かされたと言っても抱きしめられただけで・・・別に私が勝手に悶えているだけなんだけれども。

「いえ、私が、私だけが変になってるだけです。
 抱きしめられただけで恥ずかしくなって、恥ずかしくって・・・」
「その気持ちもわかるけどね・・・。
 伊達君の話は聞いたりしたの?」
「まだ恋を引きずってるそうです」
「そう・・・」

先生に心当たりがあったらしい。
それでも先生にはもう好きな人がいる。
結婚だって考えているらしい。
複雑そうな顔をした。


「私ね、軽く婚約してたの。
 だけど幼馴染がいてその子がずっと好きで一回離れ離れになったけどやっぱりまた好きになって。
 結局私裏切っちゃったんだよ・・・」
「でも伊達先生は裏切ったとか思ってません。
 斎藤先生には幸せになってほしいって言ってました」
「そっか・・・ねえ田村さん。
 もしあなたが伊達君と相思相愛の関係になったら伊達君をずっと好きでいてあげれる?
 生徒とか教師とかそういうのは無しで」
「好きなら・・・ですね」

好きなのに好きではなくなるということはないだろう。
増してや相思相愛でなんて、今の私には考えられない。

「まずそんな関係になることはないですけどね、あの人にならもっといい人が見つかるはずですし」
「そんなことないと思うよ、田村さんは私の自慢の教え子でもある訳だしね」
「斎藤先生・・・」

今の私にとっては斎藤先生が男前だよ。
かっこいいよ。

「伊達君が泣いてたらさ、殴ってでもうじうじすんなって言ってあげてね」
「は、はいっ!」

そう答えると先生にいいこいいこって頭撫でられて柄にもなく凄く喜んでしまった。
喜んで笑顔になってたら何故か伊達先生が来るのが見えた。

「Hey! kittenやっぱりhoneyの前じゃすんげえ嬉しそうな顔すんだな」
「だ、伊達せんせっ・・・」

やっぱり落ち着いてきたと言っても本人見たとたん顔が熱くなってきた。
私どうした、どうしたちゃったんだ。

「Ah-n? どうしたkitten」

こういう時に無自覚のが本当に恨めしい。
理由を尋ねてくるのも駄目でしょ。

私が答えられる訳もなく時間がないので失礼します、といって逃げた。
斎藤先生が後ろで苦笑を洩らしたのを聞きながら全力で走った。




  


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