「まあ話聞くだけしかできないかもですけど」
「ああ、悪いな」

俺の話を聞くためにここまで来てくれるこいつは本当に根からいい奴・・・お人よしなんだと思う。
同情だとしてもいい奴だと思う。
俺を男として見ていないところを見ると別にタラシな奴でもないんだろう。
過去に俺に近づくやつがいて家に来たいと言った奴もいたがこうやって女入れるのは理意外は初めてだった。
そういや婚約してた訳だしな。

『政宗様、お茶をお持ちいたしました』

部屋の外からそう言われて去っていく足音が聞こえた。
小十郎の好意を無駄にする気にもなれず少し襖をあけてお茶の乗ったお盆ごと部屋に入れた。

「ほら」

そう言って田村に渡すとありがとうございますと返された。
俺もこのままじゃこいつを家に帰せないなと思い、本題に入った。


「生徒にこんなこと言うのも悪いと思ってるけどな。
 ・・・俺とあいつは軽く婚約者だったんだよ、でも元親に取られた、というか譲った。
 俺がもうあの二人に入れる間なんてなかったから。
 それだけの話なんだけどな、今でも」
「それだけって・・・それだけっていうレベルなのに先生は傷ついてるじゃないですか。
 これが、私の言っていることが世間では甘いと言われて先生自身が感じてることかもしれませんが自分をもっと大事にしてください」


伊達先生のことは普通に好きだ。
それでも、今の私にはなんとなく斎藤先生のことが浮かんでいた。
どちらの先生にも幸せになってほしい。
それでも伊達先生の場合はちょっと難しそうだ。


「新しい恋はまだできませんか」
「恋っつうもんはいきなり来るもんじゃねえか?」
「・・・そうですね」

別に傷つきたくないからしないとかではないらしい。
伊達先生だしそれなりの自信はあるんだろう。

「ひとつだけ頼みごとしてもいいか?」
「はい?」
「もし俺があいつらが結婚するときうじうじしてたら全力で殴ってやってくれ」

それは泣き面に蜂という状態じゃないかと思ったけど。
それなりに考えはあるんだろう。
うじうじしてる自分は嫌なんだろう。

「わかりました。
 私で足りなければ片倉先生と二人で殴らせてもらいますよ」
「kitten一人で十分だぜ。
 今日はありがとな」

そう言ってお茶と一緒に出された団子を差し出された。
手で取ろうとしたら直接口に入れられた。
所謂あーんだね、これ。
そんなことを冷静に考えていた・・・という訳にもいかず、さすがにこれは私でも恥ずかしかった。

「ちょっ、これは・・・んな恥ずかしいことをっ・・・・・・」
「破廉恥だってか?」

頷いてみるとははっと先生は笑った。
悪ノリしてか、口元に付いた団子のたれを顔を近づけ舌でぺろりと舐めた。

「・・・・・っ!!!!」
「kitten.」

悪ノリの度が過ぎていた。
舐められた瞬間から私の体は固まってしまい、それに加えて先生の甘い声だ。

「cuteな反応できんじゃねえか、なあkitten.
そろそろ送るぜ」
「べ、別に可愛い反応なんてした覚えもできた覚えもありません。
 送ってもらわなくても結構です!
 この淫乱教師がっ!」

もうこれ以上素直に言うこと聞くのは不本意なので部屋を出るなり、鞄を取って片倉先生にごちそうさまでした、と挨拶を済ませて家を出た。

外に出るのと同時に私を捕まえた伊達先生。

「忘れ物しましたか?」
「Ah-・・・笑って悪かったって。
 送ってくからよ」
「結構です」

先にスタスタと歩いていくが先生の長い脚に追いつかれないわけがなかった。
観念して振り向いて改めていいですと言おうと思った。

「別に大丈夫ですよ」
「こんな時間にladyを出歩かせられる訳がないだろ you see?」
「わかりましたよ・・・」

今度は二人並んで歩いた。
歩幅は先生の方が広いのに並んで歩けているのはきっと先生の心遣いがあるんだろう。


「先生・・・話聞いてましたけど、私にはやっぱり相談役は務まりませんね」
「いや、kittenで良かった」
「でもぶっちゃけた話私は斎藤先生に幸せになってほしいと思ってしまうんです」
「理が好きだよな、ほんと」

憧れの人だから仕方ない、そうやって目で訴えてみるがもう先生には御見通しだったらしい。

「だからだよ」
「え?」
「だから、だ。
 俺だってあいつには幸せになってほしいからよ。
 お互い様だろ本当は、kittenも寂しいだろ」

たしかに斎藤先生がどこかに行ってしまうのは寂しいかもしれない。
でも私は憧れな人止まりだ。
伊達先生は違う。
ずっと恋してて一緒にいる時間だって長いのに振り向いてもらえなかった。
傷が違いすぎる。


「お互い様なんかじゃない・・・」
「Ah?」
「自分で全部背負おうとなんてしなくていいんです。
 教師なんだから教師らしく生徒の前ではしゃきっとしてください、いつまでもそんなうじうじしてるところ見せられたって全然嬉しくないです。
 だいたい先生らしくないです」
「・・・ふっ、そうだな。
 らしくなかったな」

先生に頭を撫でられた途端にちょうど家の前に着いた。

「送ってくださりありがとうございました」
「こっちこそ愚痴聞いてもらって助かった」
「じゃあ」

軽く会釈して家に入ろうとした。
なのに。
先生が引き留めていた。

「先生・・・?」

先生は黙ったまま私を引き寄せた。
何も言わないので私も言葉を紡げなかった。

「お人よし過ぎるぜkitten」
「そうでもないと思いますが」
「抱きしめていいか?」

先生はもしかしたら剣道とか・・・そんな視点で斎藤先生と私を重ねているのかもしれない。
でも、そんな先生を見ていられなくて今日だけなら、と私からも腕を回した。






  


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