「ちゃんと説明して」
押し倒されたままではあるが納得がいかないのでとりあえず冷静を装おう。
男に押し倒される経験なんかあまりない。
というか、この年齢で押し倒されまくっててたまりはしない。
元親さん・・・もう元親でいいか。
元親に鬼と言うのはどういう意味かを問いた。
「鬼ってのは人間を喰うだろ」
「それはまあわかる」
「だがこんなご時世じゃ喰えねえ、俺は何かと400年喰ってねえんだよ」
だから腹減ったから私を喰わせてくれということなんだろう。
絶対嫌だ、痛いの嫌いだし。
「痛いの無理何で他をあたってください」
「痛くねえから、肉はまだ喰わせてもらわなくたっていいから、だから抱かせてくれ」
「ええ、何で?」
「鬼が喰うのは肉、欲、その他もろもろだ」
「その他もろもろってだいぶいい加減なことで、それで・・・
さっきご飯も食べてたじゃないの」
「人間でいう飴程度にしかたまらねえんだよ」
だからな?、そうやって言葉にせずとも目で訴えてくる元親。
おそらく400年と言ってるところで相当お腹減ってるんだろう。
「名前」
「それでも他をあたったらー・・・な、んっ」
名を呼ぶなり私に噛み付くようにキスをしてきた元親。
入り込んできた舌は私の舌を舐めあげ、私の舌を誘導するように動く。
私も自分から絡めようと一瞬そう思ってしまったが状況を考え、舌を奥へ退いた。
しかし、元親が私の頭に手を回すと同時に舌の力が抜けてしまい、舌を捉えられる。
「ふぁ、だ、め」
「んなこと言ってもキス一つで気持ちよさそうじゃねえかよ」
そう言って元親は不敵に笑った。
そのひとつの仕草だけで色気が漏れる。
たいして男を求めている訳でない私なんかに無駄に色気を振りまくなと言いたいものだった。
「七日間、俺はアンタに何でもしてやる。
抱くときだってどんなことでもしてやるし、俺ができることならなんだってしてやる。
だから七日間で俺の名前を当てろ、当てれば俺は消えるし、当てなければアンタの肉も喰う」
「つまり私が当てれば何も被害も被ることもなく、ただできることしてもらって帰ってくれると?」
「ああ、そうだ」
七日間、当てなければ私の命がそこで終わる。
危ない賭けだった。
それでも私に決定権はないらしい。
もう決められてしまったことらしい。
「名前、残念だが俺が助けた時点でそれが決まった。
俺と会っちまったのが運の尽きよ」
まるで日本昔話みたいな話。
それが現実になって私の元へ現れた。
その話は大工と鬼の話。
今回は私と鬼の話。
今日から七日間、私の命を賭けて鬼の名を当てることとなってしまった。
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