帰路に着けば、今までの人生を振り返ってしまう。
もう日の光を見ることがないのかもしれない。
だけど、不気味なぐらい私は平常心だった。


「ここで元親と出会って、一週間・・・あっという間だった」

きっと元親に食べられてしまうのも一瞬。
どうやって食べられるんだろう。
そんな疑問もあったけれど最期ぐらいできる限りの長い時間を元親と過ごしたくて、元親が好きだと言っていた鰹のたたきを買って足早に帰った。



**********




「ただいま」
「おう、お帰り・・・って、何だそりゃ」


私が持っていたいつもの鞄にプラスされた白いビニル袋に反応する元親。


「何って晩御飯のおかずに足そうと思って」
「晩飯できてっぞ?」
「まあまあそう言いなさんな。
 元親鰹好きって言ってたでしょ、鰹のたたき買ってきたから」


袋から出そうとした時だった。
片手を引かれて玄関で元親へ倒れこむように抱きしめられた。


「元親どうしたの?!」
「何だって名前はこうもかき乱すんだ」
「え、何を?」
「・・・・・・俺の心だよ」


元親の心?
一瞬思考がストップして同時に動きがストップした隙をついて唇を奪われた。

「本当は黙ってようと思ってたんだけどよ、飯食いながらでいい、ちゃんとした話がしたい」
「いいよ、でも大事な話ならご飯食べながら話さないで」
「だけどよ・・・わかった」


ご飯の時に大事な話を受け止める精神力なんて私は持っていないんだろう。
それを考えて久々にじっと元親を見たらなんとか了承してくれたらしいのでよかった。
だけどまだ話されていない大事な話に緊張し、胸の鼓動はおさまりそうになかった。






  


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