事後、元親は眠っているというのにひとりで起きている私。
まだ体が疼き元親の手を胸に押し当てては動かしたりしている。

いっそ元親が起きてくれたらいいのだろうか。
でもこんな私を見て今度こそ軽蔑するだろうか。
今まで出会った人と私を重ねるだろうか。


『気持ち悪い』


もし元親にそう言われてしまったら。
考えただけで私の手は止まり、元親との距離を取ろうとした。

しかし、未だ疼く体。
手の動きは止んだが、眠れそうにもない。


「あつい・・まだ、体熱い・・・」


眠れなくてもせめて朝まで耐えられたらいい、そう考えて元親に背を向けてぎゅっと目をつむった時だった。
背中に何かが触れた。


「元親?」
「まだ寝れねえのか」
「・・・もう寝る」


ふいに目を覚ましたのか私の状況はわからないらしい。
何があるのかわからないように言いながら後ろから私を抱きしめる。

普段ならまだ何か言い返しそうだけれど。
何分今は黙っているだけで精一杯。


「まだ足りねえってか?」


殊更に耳元に届く吐息混じりの声。
これには頭を抱えたくなる。
それでもここで素直になったほうが・・・、でも言えない。
頭の中で二人の私が葛藤していた。


「ちなみに素直に言わねえなら意地悪するしかねえな」
「意地悪って?」

少し沈黙が流れたかと思うと元親が私を自分の方へ向かせたかと思うと胸に顔を埋めだした。
髪の毛、さらには唇が肌に触れるたびにくすぐったさがもどかしさとなって私の中を廻る。


「あ・・・はっ、やだ」
「ほらもどかしいんだろ?言うこと言って気持ちよくなっちまえよ。
 今更俺に何遠慮すんだよ」
「だって!」


”だって”

その言葉の先はとてもじゃないけど言えなかった。
元親に好きだなんて言えない。
言ってしまえば終わってしまう何かが終わってしまう気がして怖かった。

きっと私は少し不安そうな顔をしたんだろう、元親は苦笑して額にキスを落とした。


「言えねえなら無理して言わなくていいからよ」



元親の瞳がとんでもなく優し気だった。
たまに見せる人間らしい瞳。


「本当元親って鬼って思えないぐらいに優しいよね」
「ははっ、何言ってんだ。
 ・・・俺が優しく出来てるのは名前のおかげかもな」
「へ?」


ふと呟いた元親の言葉が聞き取れず、首をかしげたところで「聞くな」と一言言われて耳を両手で塞がれた。
なんだろうと思うと、重なる唇。
元親が何度も啄むことによって生々しい音が頭の中で響く。


「・・・んっ、ん」
「やっぱりなキスだけで濡れるな」
「ひどっ」

耳を解放されてやっと元親の言葉が聴こえる。
第一声が結構ひどかったけれど。


「全部、俺に染めてやる」


元親の視線に、声に。
全てが私を従わさせた。




  


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