「今日も仕事お疲れさんな」
「う、うん、ありがと・・・」
結局資料室に元就に連れて行かれたのは二人で話するためだったらしい。
それであの後帰ってきた元就に『惚れ薬』と言われてお酒らしきものを渡されたんだけど。
見た目はただの日本酒。
『これのどこが惚れ薬なの?』
『飲ませて責任取れと言って返事を待て。
効果は続かぬが気持ちは貴様次第よ』
まあ私としては元親に責任を取らせるつもりはなかったのだけれども。
むしろ抱いてくれてありがとう・・・みたいな状態なのだけれども。
だいたい惚れ薬って。
そんな簡単にあったら苦労しない。
元就が持ってたのにはなんとなく不思議に思わなかったんだけども。
聞いたらどうせ策だ〜とかうんたらかんたら言うんでしょう。
「名前?」
「え、あ、元親・・・お酒飲む?」
責任を取らせるつもりはなかった。
だけど、効果が続かないと言うならば今だけは元親に好かれたい。
我儘だ。
本当に自分でも思う。
「おう、明日も仕事だけどアンタ大丈夫なのか?」
「私は大丈夫だから」
ごめんなさい。
今だけだから。
本当に効くのかはわからない。
元親が飲んで、ごくりと喉から聞こえる音に耳を澄ます。
「こいつはなかなかうめえな」
「・・・あれ、何もない?」
「どうした?」
飲んだあともごくごくと飲みだす元親に力がふっと抜ける。
私がこんなにドキドキしてたのに。
元就も悪い人だ。
そう思った時だった。
「なあ名前・・・俺に飲ませたもの自覚なしか」
「へ、え、あ、えっとやっぱりただの日本酒じゃなかったの」
「誰にもらった」
「同僚」
ふーんと元親が何気なく言うと、何を考えたかいつもより一段と明るくなった声が聞こえた。
「つまり俺に飲ませたってことはそのことちゃんと責任取るんだろうな?」
「うっ・・・うん、ちゃんと責任取る」
まさか私が元就に言わせろと言われた言葉を言わされるとは思わなかった。
思わず言葉が詰まる。
というか、私本当に元就が飲ませたのって惚れ薬だとか信じてたんだけど違うみたいで。
まさかあの人のことだから毒とかそんな危ないものは入れないと思う。
たぶん元親もどことなく笑っているような気がするから大丈夫なんだろうけど。
「とりあえず私洗い物片付けてくる!」
そういえばすぐにお酒出したせいで洗い物まだだったんだとこれ幸いに思い、一時その場を抜け出した。
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