「うっ、ごほごほっ・・・頭痛い」

昨日の夜いつの間にか気を失っていて気づいたときには朝だった。
けだるい体を起こそうとすれば力が入らず何でだろう、そう思って元親に頼んで体温計を持ってきてもらえば熱だった。

・・・・・・まあ、うん。
昨日髪乾いてないまま汗かいたまま寝たし、忙しいのに睡眠はろくに取れていなかった訳で。


それでも仕事には行かないといけない。
少し遅れそうだとだけ電話してみれば、起き上がることもできないのに仕事なんてできるか!うつすな馬鹿!と怒られて休みになった。

ありがたい話なんだけど申し訳なかった。
でも今私はホッとしているわけで。
休みになって良かったとかそういうのではなくて。
ただ元就が電話に出なくて良かったっていう。
我ながら情けない、確かに昨日の今日で事が起こったばっかりだったとは言えずっと仲良くしていたわけだ。

「はあ・・・」
「大丈夫か?あ、タオル変えてやるよ」

隣では元親がまともに介抱してくれている。
家事も普通にできるわけだし心配することは何もなかったけれど。
感謝してる、本当に。
一人暮らしだと体調崩した時とか大変だったし、今こうやって一緒にいてもらえると凄く安心感があるし。

そんなことを考えていれば水を絞ったタオルが額に乗った。
見上げてみれば当たり前だけど元親。
何でこんなに安心感があるんだろう、不思議に思うけれど聞くようなことではなかったので勝手に鬼だからと解釈した。

「元親、ごめん。
 もうあと寝るだけだしどっか出かけてきても大丈夫だから」
「馬鹿野郎、こんな状態で放ってどっかに行けるかよ。
 別に買い物とかは昨日まとめてしてたし今日はずっと一緒にいるからな」

元親が掌に唇を当てた。

「っ」
「早く元気になれ。
 暇なら俺が話し相手になってやるからゆっくり休め」
「元親・・・」

私は元親に情を持ってはいけないのに、元親は私に情を持つことはないのに。
現実から目を逸らしたい、そう思った瞬間に気付いた。
私が元親に、好意を持とうとしている現実に。


おかしい・・・
おかしい、おかしい、おかしい、おかしい、おかしい・・・

鬼だとか言われて出会って、抱かれて、一緒に生活して、
ただそれだけなのに。

私がおかしい。
それとも元親がおかしくさせているのか。


「ずるいよ、元親」
「ん?」
「・・・何もない。
 あ、あのさ、寝ようと思ったんだけど汗かいてるから、体だけ拭きたいからタオル持ってきてもらっていい?」
「おう、待ってろ」

頭を軽く撫で、元親の姿を見送った。

きっとすぐ帰ってくるだろう。
だけど、いづれは戻ってこないようになる。
食べられる、食べられない・・・どちらにせよ、元親との別れはやってくる。


「私はほんっと馬鹿だ」

自己嫌悪で笑いがこみ上げてくる。
こんな私を一体誰が好きになるか。
これ以上元親を好きになってはいけない、頭で理解はしていたのに熱を持った体は寂しさで涙を流していた。




  


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