いつも通りの日だった。
少し変わったところがあるというと、残業で帰りが遅くなってしまったことがあるぐらいだ。
特別なことなんて起こる訳もなければ、たいして変わらない日常だった。




ただし、今までは。
今私は危機に陥っている。
運悪い・・・。
ガラの悪い男性・・・所謂チンピラみたいなものたちに絡まれてる。
酒の匂いはしないので意識はしっかりしているようだが、しつこく付いてくる。

「いいじゃねえか、ちょっとぐらい。
 俺たちと遊ぼうぜ」
「ごめんなさい、急いでるので」
「ちょっとだからさ!ほら!」

腕を掴まれてしまい、そのままチンピラの方へ引き込まれてしまう。
腕を離そうとしても肩に手を回され、私一人の力じゃ逃げるのが難しくなってしまっている。
しかも相手は複数。
ここまで距離を縮められたら難しいどころか不可能に近いだろう。

警察に補導されろ、そう願っても周りは人気もそんなに多い訳でもなく通りかかっている人も見て見ぬふりをする。
なんで残業なんかしたんだろう、
関係ないことだとわかっていながらも今日の行いを恨めしく思ってしまう。


「いい加減離してくださいよ!」
「時間そんなに取らせないって、一緒にちょっと飲むだけだからさ!」
「私じゃなくてもいいじゃないですか!!」

いい加減腕に手を回されるのもいらいらしてきた。
もし私に並大抵の男性の力があれば殴るぐらいだ。

居酒屋などがある場所とは反対方向へ連れて行かれ、これはもう危ないなと思ってくる。
もしかしたら私は日が変わるまでに無事に帰れないかもしれない。

「ツレが怒るのでほんとやめてくださいって」
「ツレって彼氏?」
「っ、そうですよ!彼氏です!」
「・・・じゃあ呼べるの?」

一瞬言葉を詰まらせたせいで嘘だと判断されてしまった。
こういうときに頭は回るくせに馬鹿みたいな行動してるのが頭にくる。
治安ぐらい守れってんだ。

ニヤニヤと私を見つめるチンピラの腕の力は強くなっていった。
心なしか顔も近くなった気がする。

「ほーら、嘘だ。
 嘘吐きにはお仕置きもしなきゃな」
「なっ、もういいから離してくださいっ!」
「そんなこと言われて話す奴なんかー・・・」


「離してやれよ」


言い争う声が大きくなっていった私たちの間に入り込んだ低く擦れたような声。
図体のいい男性が立っていた。
髪の色が銀髪で一見チンピラと言われても不思議はない。
それでも、私を助けてくれようとしているらしい。

「なんだよ、お前。
 この子の男ってでも言うつもりか?」
「ああ、そうだよ。
 人の女取っといて覚悟はできてるんだろうな?」

そう言って私を助けようとしてくれる男性は私の肩を掴んでいたチンピラの手を掴んだ。
力を入れて掴んでいるらしく、チンピラの顔が苦しくなってきている。
呻き声も聞こえてきた気がする。

どんだけ力入れているんだろとか思いながらもその光景を眺めていると、チンピラが観念したのかそこを去っていった。
一人残らず全力でその場を立ち去っていった。

残されたのは私と助けてくれた男性。
お礼を言おうとした瞬間にその男性は「腹減った」そう言い残して倒れてしまった。





    


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