04

それから弥三郎とは毎日のように会うようになった。
会えば他愛のないことを話し、日が暮れる前にはそれぞれの居場所へ戻る。

一日僅かな時間しか会えなかったとしても、毎日が楽しくて仕方なかった。
自分にとっての貴重な時間だった。

とにかくそのころは幸せだった。






しかし、そんな幸せはずっとは続かなかった。
弥三郎との別れが来た。
理由は単純と言えば、単純だ。


「父上にばれてしまったんだ・・・」
「そうか・・・」
「だから今日で理と会うのは最後になるかもしれないんだ」
「えっ!?」

弥三郎がそれなりの身分のところ出だというのはわかっていた。
それでも、自分と会うのを止められるほどとは思っておらず、驚いた。


「最後、なのか?」
「最後かもしれない」
「なら、また明日会える可能性があるのか?」

静かに弥三郎は首を振った。
その行為はどう受け折ろうとも否と示しているだけだった。


「でも、かもしれないってー、」
「だからまた会えると信じてる」
「そんなっ」
「絶対に会いに行く」

その言葉はあまりにも現実的ではなかった。
ただの口約束なのだから。
それでも。
信じようと思ったんだ。


「絶対に約束できる?」
「約束する」
「・・・・・・なら、わかった」



”私も会いに行く”

胸元に光る、首飾りを取った。

「理?」
「絶対に会いに行くから。
 これを持っててくれ。
 俺の母さんの形見だ」
「そんな大事なものっ」
「・・・約束は必ず守る。
 だから、果たされたとき返してくれ」

無理矢理弥三郎に押し付けた。
この時泣いていたのか、自分の手に雫が乗っていた。



「わかった、必ず約束を果たす」
「ああ、ありがとう」
「これ、渡しておくから持っておいて」

弥三郎が渡したのは簪だった。
とても子供が買えそうにないような高価な簪。

「当たり前だ」
「君がこの簪をつけれるようにするから」
「それは無茶なことだな」
「叶えて見せるから」
「・・・ありがとう、弥三郎。
 俺が本当に男だったらお前を嫁にしたかったよ」
「なら嫁に迎えるよ」
「面白い冗談だ・・・。
 でも、今は返っていいかもな」



既に、日が暮れようとしていた。
いつも別れを告げる時間だ。

「弥三郎、さよならを言うつもりはない。
 またな!」
「また会おう!」


背を向け、弥三郎と別れた。

  


×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -