元親と祝言を上げてからの私は何だか暇になってしまった。
戦も終わり、軍師としての本来の役割がなくなったから。
それはいいことなんだが、望んでいたことなんだが・・・。

元親はというと大名になった故、前ほどではないがどこか忙しそうにしていた。
国主なのだから何かとしないといけないことはあるんだろうと思うけれど。
それでも私と話すことも少なくなっていった。
女らしい言葉遣い練習するために練習台になってやるって言ってたのも本当だったのかどうだか。


「なあ重、元親どうしてる?」
「毎日会ってんじゃねえのか?」
「夜はな。
 でもさ、結局忙しそうだし私の役目は終わったし会いに行く理由もねえんだよ。
 元親に休みはないしな」
「アニキなー・・・昼間何だかんだで時間あると思うんだけどな」
「何っ・・・・・・」

それはつまり時間あるけど私を構ってくれないー・・・、いや会いに来てくれないということか。
そういうことなんだな。
まあ個人的にもあまりべたべたするのもどうかとは思ってる。
・・・まだ新婚なのに、私が冷めてるのか・・・・・・?
でもそんなのなんか知らない。

「元親に会いに行ってくる」
「え、ちょ、理!」

後ろから叫ぶ重を放って私は元親の部屋に駆け込んだ。




部屋に入ってみると、元親が文机に伏せて寝息を立てて寝ていた。
夜なんで眠くならないかと思えば、こういう実態があったのか・・・。
出そうと思っていなくても溜息が出た。

「元親、寝てるんだよな?」

頬を突いてみても少し声を出しただけで起きそうにはない。
そのままの手で元親の唇をなぞってみた。
柔らかいのに、この唇で息が詰まりそうになるんだと思うと自然に苦笑が毀れた。


「結局私よりも睡眠だよな。
 人間だもん、仕方ないか・・・それにしても冷めてないか元親? 
 私たち新婚だぞ、もうだいぶ年数経ってる前田夫婦よりも冷めてるぞ。
 まああそこまでなる気は無いし、そんなの恥ずかしいしな」

普段の愚痴を寝ている元親に吹き込んから背後から抱きついてみると思っていたよりも温かかった。
その温かさでもう今までの愚痴ももういいんだと思わされてしまう。

「なんだかんだで惚れているのは私か。
 残念だったな元親」
「何が残念だよ」

背中が動いたかと思うと体はよろめき、そのまま腕を掴まれ元親の膝の上に座らされた。

「元親っ、違う、元親様、起きていられて・・・?」
「そりゃ、好きな女にんな可愛いことされて可愛いこと言われたらな」

ニヤリと笑われ、恥ずかしいことしてしまったなと我ながら思う。
見られるだけでも恥ずかしくて膝から下りようとはするが元親の手がそれを拒んだ。

「それで不満だったのか?」
「べ、別にそのようなことはございません。
 私は元親様のお傍にいられるだけでー・・・」
「二人の時ぐれえ口調戻してくれや、なんか距離できちまうだろ」
「え?」
「野郎共とかと話すときはまだそのまんまなんだろ、俺がいるときにはちゃんと代えてるみたいだがよ。
 でも二人っきりの時ぐれえいいじゃねえか、誰も聞いてないんだし」
「元親・・・」

確かに口調を治すのは子供ができてからで、なんて言ってたけど。
でも、それまでに治るかわからないし、まず子供がいつできるかなんてわからない。

「理が女らしいのも好きだけどよ、理らしい理も好きだからよ」
「そう言うのはずるいぞ」
「じゃあ指切りだ」

そういやこんな会話をしたことあったか、元親と。
あの時はしなかったけど。

「元親、指切りの意味知ってるか?」
「約束守るとかじゃねえのか?
 そういや前はしてくれなかったな」
「指切りは元は愛情の不変を誓うものなんだよ」


遊女が惚れた客に自分の小指を第一関節まで切って渡す。
そりゃ本来の指切りは痛くてたまらないんだろう。
貰う方も貰う方で覚悟はないといけなかった。

それを聞いた時から私は約束を守るにしても、愛を誓うにしてもなかなか指切りをできなくなった。
最後にした相手は亡きお館様だった。


「でも、もう元親ならいいかな。
 元親なら信じられるし、もし本当に指切ることになったって受け取ってくれるだろ?」
「安心しろ、俺は指切らなくたってお前の気持ちぐらいわかってんだから。
 どうせ好きで好きでたまらねえんだろ?」
「そ、そうだけど・・・・・・馬鹿っ」
「俺がどれだけ我慢してるか知らねえだろ、言っとくが理が思ってるどころじゃねえからな」
「そんなの私だってー・・・」


「愛してるから」


そう言い、小指を絡ませた元親は私の唇を塞いだ。
昼間に何かされるなんて久々なもので照れて力が抜けた私は元親に身を委ねた。



変わらぬ愛を
(惚れた方が負けだとはよく言ったもんだ)
(なら両方惚れたらおあいこか)





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指切りで思い出して書いたネタ。
やっぱりこのヒロインちゃんが口調楽で書きやすい!
そんなことをしみじみ思った管理人でした笑
最後のは管理人が格好つけたかっただけです(・ω・´)どおおん



    


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