48

「そろそろ酔ってきたか?」
「ん〜」

少しふらついてきた私を心配そうに見つめる元親。
私も酒は好きだけど強い訳ではない。
体がふわふわしている錯覚に溺れようとしている。
元親が見つめてくるせいで顔が熱くなってきている気もする。

「もう休むか?」

私に気遣って元親はそう聞くが、個人的にはまだ少しいていたくて。
まだこの空気に酔っていたいとも思う。
幸い酒は少しずつ飲んでるからまだ寝なくても大丈夫そうだ。
そのことを元親に言うと、納得して私の頭をくしゃりと撫でた。


「約束叶ったな」
「おう、嫁に迎えてくれてありがと。
 私元親が旦那だって自覚が持てないほど幸せだ」
「ははっ、どういう意味だよ。
 でも、ほんと長かったよな」
「元親に会ってからはすぐだった気もするけど」

長かったような、短かったような。
本山で過ごした日々も濃かったけど、長曾我部も濃かった。
毎日が新鮮で、不幸だと思ったことは無かったと思う。
それだけ私は幸せだったんだろう。
そして、今こうやって元親の傍にいられているという事実があって・・・
幸せすぎて私明日には死んでしまうんじゃないかと心配だってしてしまう。


「元親、私より先に死ぬんじゃらいぞ」
「おう、簡単に逝っちまうつもりはねえよ。
 呂律も回らなくなっちまったが大丈夫か?」
「水でも飲むから」

そう言って水を注ぐがうまく注げない。
終いには少量溢してしまった。
そんな私に元親は溜息を一つ溢した。

仕方ねえな、そう言って元親は私から注いだ水を奪うと私の口に御猪口を近づけさせ水を飲ませた。
元親が器用だと言っても水が溢れた。
溢れた水は顎を伝い、首を伝い、胸元まで伝った。

「あ、せっかくの服が・・・」
「まあ気にすんなって、でもこれ以上溢すんじゃねえぞ」

元親はそう言って水で濡れた胸元を嘗めあげ、噛み付くような口付けをした。
周りは周りで盛り上がっているのか、私たちがしていることに気付いた様子は無かった。
もう拒む理由はなく私は元親のそれを受け入れた。


「んっ、ぁ」
「良い声出すな、他の野郎に聞かれちまう」
「だって元親からしただろっ」
「そりゃしたくもなっちまう」

いいだろ、そう言って妖艶に笑う元親に頷くことしかできなかった私はまたもあっさりと唇を奪われた。

そして、誰にも見られませんように、
そう祈りながら私は元親に永遠の愛を誓った。

元親の少し肌蹴られた胸元には父が母への愛を形にした首飾りが、
まるで私たちを見守るように光っていた。



(終)



  


×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -