03
「辛かったかもしれないが、死ぬまでのことなのか?
死んだら全てが終わるんだぞ、今までのことが」
「それでもいい」
「そんなこと言ったって悲しむ奴がいるだろ」
「そんな人いない・・・」
甘やかされたのか、それともここまで追い詰められたのか・・・
よくわからないところだった。
こんな女子は初めてだから困ってしまう。
どうすればいいのか全くもってわからない。
「こういうのを俺から言っても意味無いのかもしれないが、俺はお前が死んでしまうのを見たくない」
「え?」
「・・・俺はそう思った」
「ほんと?」
「ああ」
俺の言葉に嬉しさを感じたのか、その女子は笑顔を見せた。
その笑顔は眩しくて、同性だとわかりながらも自身見とれてしまった。
「これからも会える?」
「まあ・・・、そうだな、此処はよく通る道だからな。
会おうと思えば会えるんじゃねぇかな?」
「じゃあ会いに来ていい?」
「こっちは大丈夫だが・・・」
「じゃあ会いに来る。
名前は?」
「俺か・・・?」
ここで迷った。
本当の・・・、女である自分の名前を言うべきか、男の名前を言うべきか。
「俺の名は孫八だ」
「・・・まごはち?
女の子なのに?」
「っ!!?」
言葉を出そうにも出せなくなってしまった。
え、何でだ?
「何故俺が女だとわかった?」
「え、直感?」
「それは随分大雑把なことだな・・・」
「でも、当たりだったんだ。
それで・・・本当は?」
此処で言わなければおかしいだろう。
別にこの女子に言ってはいけないということはない。
「・・・理だよ」
「理か、そっちの方がいい名前なのに」
「できれば、俺が女だとわからないように接してくれ。
いざとなったときのことを想定して、頼む」
「・・・?
よくわからないけど、わかった。
弥三郎だ、よろしく」
弥三郎、そう名乗った。
あまりにも男みたいな名前だったため、少し笑ってしまった。
「何で笑うの?」
「いやいや、何にもない!
気にしないでくれ」
誤魔化すように手を差し出した。
そうしたら、向こうもわかったように手を握った。
「これからよろしく」
「こちらこそ」
この日、初めて自分から友を作った日だった。
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