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「そういや、元親の着てるのも南蛮のか?」
「おう、いいもんだろ」
「型もいいと思うんだが、私のは肩肌蹴すぎてないか?」
「いいじゃねえか、似合ってんだからよ。
 それに肩作んのにめちゃくちゃ手伝ってもらったんだからな、竜の兄さんやら、毛利やら・・・関ヶ原で会った奴らとかな」
「ええ、毛利が?」

毛利と言えば毛利元就だ。
一部では元親と男色の噂が上がったこともあるが、長曾我部にとっては敵方である毛利だ。
それに性格も冷たいもので、手伝うとは思えなかった。
何があったんだ・・・。

「まあ毛利のは匿名だったんだがな、確かにあいつでも手伝ったんだよ。
 意外だろ?」
「だいぶな。
 それでも嬉しい、ありがと。
 元親にはいろいろ感謝してる」
「俺も理にはいろいろ感謝してるぜ、お互い様だろ」
「いやいや、お互い様もないだろ。
 私ばっかり元親に良くしてもらってるぞ」
「俺は理がいるだけでいいんだ」

真面目な顔にさらっと言った元親。
台詞が恥ずかしすぎる。

思っていることは同じだけど・・・。


「元親・・・一度しか言わないぞ」
「ああ?」
「私は元親が傍にいてくれればもう何もいらない、何も望まない。
 本当に周りが見えなくなるくらい、元親しか映らない」
「理・・・」

恥ずかしくなって、御猪口の酒を一気飲みした。
喉に多少きゅっと来るが恥ずかしさを紛らわすことができるのならいい。
むしろ酒で酔っていて出た発言だと思ってほしいくらいだ。
運が良ければ、忘れたい。


「ったく、そうやって可愛いこと言ってくれんなよ。
 心の準備もできねえ」
「自分ではさらっと言うくせに」
「本心だからな」
「っ・・・・・・」

そういう元親も元親だった。

「そういやこうのの恒例の挨拶回りはいいのか?」
「ああ、してえ奴ならまた来るだろ。
 一応来てるやつは直接誘った訳だし、一回礼も言ってるからな」
「意外にしっかりしてたんだな」
「まあなー」

『アニキッ!!』

しばらく元親と二人で話していたら何人かの同僚が来た。
重たちだ。

「アニキ、おめでとうございやすっ!
 あと孫八、お前がアネキになって俺たち嬉しいぜ!!」
「おいおい、アネキってなあ。
 同僚だろ?アネキもねえよ。
 普段通りしてくれよ、じゃねえと調子が狂っちまう」
「お、おうっ」

何故か元親の前ではいつも通りなのに私の間ではぎこちない。
これか?
このうえでぃんぐなんたら言う奴のせいか?
この女もんの服が原因か?

「やっぱり私に女もんは似合わないか・・・?」
「いやっ、そんなことねえよ!」
「無理するな。
 元親わざわざ作ってくれたけど似合わないのは勘弁してくれよ」
「何言ってんだ、あいつらがぎこちねえのはー」
『アニキッ!!』
「照れちまってんだろ」
『アニキイイイイイイイイっ!!!』

言っちゃったぜ☆というようにちょっとふざけたように笑う元親と、
崩れだした同僚たち。

私としてはどう反応をしたらいいかわからないところなんだけど。
喜んでもいいんだよな。

「あ、ああ、ありがとな。
 正直服に着られてる感があったからそう言われると嬉しい」
「お、おう。
 孫八、アニキに幸せにしてもらえよ」
「おい、心配してんじゃねえぞ!
 俺はこいつを幸せにするのは決定済みだ」
『さすがアニキ!!』

いつ見たってこのやり取りは微笑ましいものだ。
自分でしようとは思わないけどこのやり取りが凄く好きだ。

『じゃあ失礼します』

そう言って並んで戻って行く姿を見送った。
そういうことでまたまた二人きりで話すことになる。
目の前ではたくさんの人たちが騒いでるけれど、上座は二人しかいない。
少し恥ずかしさもある。


「理、長曾我部に来れて幸せだったか?」
「・・・私は幸せでした。
 あの海で自害してしまったいたらきっとこんな風に元親様とも笑うこともできなければ、
 人として大事なことができぬまま終わってしまったと思います。
 有難う存じ上げます、元親様」

正直堅苦しい女言葉は苦手だった。
でも、せっかくだから今こうやって女にさせてもらったのだからこうやって礼を言う時ぐらい女でいたい。

「やっぱり慣れないから、しばらくこっちの喋り方でいいか?」
「そっちのほうがお前らしいだろ、でも俺の為に頑張ってくれたってのは嬉しかった」
「そうか、まあ時間掛けてでも直さねえとな口調は」
「餓鬼育てるまでだな」
「なっ、お、おまっ、元親っ・・・さらっとそんなことを言うな!!」

餓鬼育てるって、まず子供を産まなければならないということだ。
産まなければならなければそれなりのことを元親としないといけないということだ。
そこらへんは目を逸らしていたけど。
やっぱりしなくちゃいけないんだよな。

「元親・・・」
「ん?」
「優しくしてくれるか・・・・・・」
「だああああああ、んなこと言われて抑えられる男がどこにいるってんだ!
 もうお前は天然か、それ計算して言ってんのか、もう、もう・・・ああああ!」



どうしよう、元親が壊れた。
いきなり叫びだしたかと思ったら急に説教みたいなことしだして。
あれかな?
酔ったのか?

「元親大丈夫か?」
「んなもんお前のせいだろうが」
「ええ、人のせいかよっ」
「今回に限ってはお前のせいだっての・・・」

元親もやっと落ち着いてきたようなので、ほっと息をつく。
元親の方もほてりを覚まそうと少量の水を飲んだ。

「まあ毎晩ヤッてりゃ慣れんだろ」
「はあ、毎晩だと・・・?」
「ったりめえよ、理もわかってたんじゃねえのか?」

まあ元親が性欲強いかどうかって聞かれたらよく知らなくても強いって答えると思う。
見た目通り破廉恥だ。
今から先が不安にもなる。

「元親だから許す」

相手が私でいいのなら。
元親が私を選んでくれたから。

できることならやってやる、そう羞恥を隠して言うと元親が嬉しそうに笑ったのはいつまでも忘れないだろう。
その笑いがただ体を目的として笑ったのではなくて、心が嬉しかったと笑ったのだと知るのはまだ先だった。




  


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