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「っし、そろそろだな」
「何が?」
「何言ってんだ、そろそろその目隠しの解放だろうが。
 それともなんだ、慣れちまったか?」
「んな訳ないだろ!!」

これに慣れてたまるか!
少し抗議してやろうと元親の肩を掴んだ瞬間ー


「元親、時間だ!」

かーんといい音鳴らして襖が開いた音がした。
声の主は家康殿だった。

「もしかして御取込み中だったか?」
「いえいえ、違いますから。
 それで、元親何かあるんだったら早く行って来いよ。
 ・・・ん、俺はどうしたらいいんだ?」
「お前も一緒に来るんだよ」

元親がそう言った瞬間に体が浮かんだ。
元親に抱き上げられた。

「ちょっ、離せよ!
 んなことしなくても歩けるんだからよ!!」
「いいから、大人しくしとけって。
 そうやって男みてえにしとけるのも今のうちなんだからよ」
「そうだぞ孫八。
 もう理に戻るんだぞ」
「いつ女に戻れるんですかっ!」

結局わんやわんやで言ってみたけど離してくれず。
元親に抱きかかえられたまま大広間に入った。




「野郎共、待たせたな!!」
『アニキーー・・・・・・・・・ええ、孫八!!?』
『孫八殿!!』

入った途端にいつも通り一領具足のアニキと言う掛け声に。
何故か私に驚いた声。

そして・・・・・・・・・
本山の家臣たちの声が聞こえた。


元親に降ろされ、目に懐かしい人たちが映った。

「お館様・・・それに皆も・・・・・・」
「孫八、此度はめでたいな。
 元親殿此度は我らも呼んでくださり感謝する」
「おう、そっちこそ来てくれてありがとな!」

え、え、え?
めでたい?
何が?

「孫八、見てみろよ、お前の格好」
「え?」

見れば着てるのは・・・何だこれ?
真っ白な服。
あの南蛮っぽい感じが漂ってる。
肩が思いっきり開いてて恥ずかしい。

「何だ、この格好は!!?」
「南蛮でうえでぃんぐどれすって奴で祝言上げるときに女が着るもんなんだとよ。
 世界に一着しかねえんだぞ、その型のもんは」
「はあ!?」

皆が驚いてた理由はこれか。
おい、待て!
思いっきり女って・・・

本山家が集まっているあたりの前に出て、座り手を付いた。

「お館様、そして皆さん。
 今まで女のくせに皆様の前に立ち、男の振りしてこき使ってしまったこと本当に申し訳ございませんでした!」
『・・・・・・・・』

何でもうまくいくことがないということはわかってる。
それでも、無言はきついな。
そう思ってたら、どこかからか笑いが毀れた。
毀れた元を見てみるとお館様だった。

「孫八・・・いや、もう理だったな。
 実は父上が死んだあと女だと母上から聞いた。
 他の者は今聞いたばかりだが、誰も怒ることは何もない」
「皆女顔だとは思っておったが・・・まさか本当に女だったとはな。
 それでも孫八と言う人間は男の中の男だと思っておった」
「皆・・・・・・」


私は何て幸せ者なんだろう。
長曾我部でも女の私を受け入れ、
本山にも女の私を受け入れてもらえた。

「有難う存じます」

もう一度手を付き、頭を下げた。
いつの間にかすぐ傍に元親がいたのに気づき、元親に軽く抱きついた。

「元親、ありがとう。
 俺の傍にいてくれてありがとな」
「おう、いい結果に終わって良かったじゃねえか。
 今夜は宴だ、パーッと行こうぜ。ほらっ!」

元親は私の手を引き、大広間の一番前に連れて行った。
所謂上座と言うところだ。

「理、好きだ」
「ああ、俺もー・・・私も元親のことが好きだ」
「ははっ、相変わらず男口調は取れねえな。
 ほら上がれ、今日はお前が主役なんだからよ」

服の裾を持ち上げ、上座に座った。

「元親・・・・・・
 幸せすぎて泣きそうだ」
「幸せなんだったら笑え、馬鹿野郎」

男の中の男は泣き虫なんだな、そう言って笑った元親を軽く小突き、酒を酌み交わした。
そして、小突いたところを軽く撫でた。






  


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