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「はー、何であんなこと言っちゃったんだろ・・・」
我ながらあれは無かった。
今になっての後悔がひどい。
元親の友人だと言えども家康殿はこの日ノ本を治める人。
失礼が過ぎた。
どうやって謝ろ・・・。
今更ながらに後先考えてなかった自分が恥ずかしい。
いつか元親に後先考えずに行動しすぎだとか言ったけ?
そのままそっくり自分に言ってやりたい。
「孫八ー!」
後ろから声が掛かり、振り向いてみるとそこには息を切らして立っている元親・・・
ではなく、家康殿がいた。
うん、何でかな?
というか、おい、元親。
「家康殿、どうしてここに」
「話すことがあってな。
先に行っておくが儂と元親は友だ、結婚なんかする気はないからな」
「まあ、それは・・・」
もしかしてこの人間に受けてたのかと思うと笑いが少し、
そして日ノ本への不安が出た。
「それでわざわざそれを言いに来てくださったと?」
「ああ、違うぞ、そういやこうやって話すのは関ヶ原以来か」
「そうですね」
まさか元親が四国を出てまで戦に参加するとは正直思ってなくて驚いたものだ。
でも、結果的には良かったこともあるので良しとする。
「傷は癒えました?」
「元親のおかげで、だいたいはと言いたいところだな」
「ここでゆっくりしていってくださいね」
「此処に来たのは治癒が理由じゃないんだ」
「え?」
「そうか、孫八はまだ聞いてないんだったか・・・」
「何がですか?」
「い、いやっ、何にもない」
自ら墓穴を掘ってしまったのか家康殿は汗をかきだした。
まあ私に大きく関わっていないことなら良しとしてそれ以上追及するのは止めた。
「一つだけ言えるのは、元親は孫八を本当に大事に思っているということだ」
「・・・そうですか」
「わかったなら帰るぞ!皆待ってるからな!!」
「皆?」
元親ならず皆・・・
きっと何かあるんだろう。
私が再び日ノ本の将来に不安を抱えたのはきっと気のせいだろう。
ずかずかと歩き始めた家康殿を追って私も後に続き、帰路に着いた。
空はほんのり赤かった。
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