33

元親と顔を合わせづらくなっても結局は毎日顔を合わせた。
会うの回数は減ったように思える。
そして、会うのも二人きりでは無くなった。
軍で集まった時に会う訳だから、私たちは何事も無かったように接していた。

それでも、私は元親に目を合わそうとはしなかった。
いや、違う・・・目を合わせられなかった。

きっと男女の差とか今までも経験の差とかもあるのだろう。
元親がいくらし慣れてる接吻と言う行為も私にとっては初めての行為だった。
男は後腐れもなくそんなことができるのだと思うと非常にいらいらする。
まあ主に経験の差と言う考え方にはなるが、少しでも男女の差がある限り私はこの苛立ちを忘れることは無いだろう。





「孫八、やっぱりアニキと何かあったのか?」

普通に接しているとしても多少の余所余所しい態度に不審になるのもいたらしい。
さっそく重に言われた。
やっぱり、そう言われるあたりで気付いた奴は数人いると見られる。

「別に何もないが、どうした?」
「最近雰囲気悪くねえか? 
 俺の思い違いだったらいいんだけどよ。
 やっぱりアニキと孫八の仲の良さは俺たちにとっても誇りだからな」
「誇り?何でまた、俺と?」
「だって軍師が主を思っても言えないこともあんだろ、それでも二人は言い合ってるだろ何でも俺たち以上に。
 元は敵だったのにそういうとこって俺たちすげえいいなって思ってんだよ」


確かに長曾我部とは敵だった。
それでも私は元親とは戦を通しても会えて別にそんなに嫌だったってことはない。
仇のくせに何故か好意は抱いている。

「ありがとな・・・でも何にもないから安心しろ、俺は生涯此処で頑張るつもりだからな」
「おうそうか、じゃあ俺はもう行くから」


走り去る重を見てひとつ溜息をついた。
結局素直になれないのは私なのか・・・?
でも、私謝ることなんて無いと思うぞ。


「孫八・・・お前も鈍いな」
「ひゃあっ」

後ろから声を上げて驚く私に近づいてきたのは元親の弟二人目、親泰殿だった。

「それで、何が鈍いんだですかね俺は?」
「兄上もなあれでもいろいろ抑えてんだよ、だから許してやってくれねえか?」

許して・・・って、この人知ってるのか?
元親口に出しやがったのか?

「安心しろ、これは俺の推測から出したもんだ。
 兄上は何にも言ってねえ」
「ちなみにどのような推測を・・・?」
「どこぞの姫さんが来てた時に押し倒されて接吻でもされたんだろ?」
「おいおい・・・元親が男色にしかとれませんけど」
「男色?
 まあ俺は今は何も言わない、だけど軍の中じゃお前が女で兄上と祝言上げてくれたらって思ってる奴は何人もいるからな、頑張れよ」



親泰殿は言いたいことだけ言って去っていった。
これじゃ私の我儘で許してないみたいじゃないか。
接吻なんぞしてきたのは元親なのによ。



そりゃ早く気まずい状態からは離れたい。
そりゃ私が女子としていられるならば、元親に嫁げたら幸せだと思う。



それが無理だから今困ってるんだよ・・・。





  


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