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「悪いがこいつと俺は婚約をしてるんだ」


元親の部屋にいる私の元に連れてこられたのは重臣の皆さんに、縁談の相手のお偉いさん・・・そして、縁談の相手本人の姫様だった。



私は今女装している。
結局先程元親がしたお願いっていうのは女装で、長曾我部の為ならばと私も仕方なく了承した。

だけど、今私の中で後悔と罪悪感が波打ってる。

とっても美人な姫様は呆気に取られた顔をしている。
まあそうだろうな、せっかく土佐まで来たっていうのに女がいるんだって言われるもんだから。
それに私だ。
たいして美人でも何でも無い訳だ。

もう姫様だけでなく重臣の皆さんも呆気に取られてる。



「その方は我らが家の者よりもお偉い方で?」
「ああ、長曾我部家との同盟国の姫だ」
「元親様、そんなこと聞いていませんでしたぞっ」
「仕方ねえだろ、言うのも恥ずかしかったのにお前らで勝手に話を進めるもんだから」


私を残して繰り広げられる会話。
ねえ、元親・・・私何気に凄い睨まれてんだけど。
正直怖いんだけど。


これからもう元親のお願いなんかで女装なんて絶対にしない、絶対に。
とりあえず心の中で誓った。


「しかし証拠はありますか?」

冷静に言いだしたのは姫様のお供の青年。
確かに証拠は言っちゃあないな。
この嘘もこれで終わりか・・・、そう思った瞬間だった。

「そんなもの形にはねえが、作れと言われたら今すぐ作れる。
 何だったら餓鬼だってこいつに孕ましてやる」
「なっ・・・」

いくらなんでも破廉恥なことだったからか、姫様、そして姫様の女中の人たちは部屋から出て行ってしまった。
あらら、罪作りな男だな・・・一見は。

「しかし我々は言葉だけでは納得がいきません」
「じゃあどうしたらいい?」



「接吻でもしてもらいましょうか」


な、な、ななな接吻だと?
させるのか?
そんなもの人前でするもんじゃねえだろうが!
世の中の若者はいったい何を考えてやがるんだ。

「そ、そのような破廉恥なこと人前でするものではございませんわっ」

いたたまれなくなって私も口を挟むが、私の言うことはもう気にも留めてはもらえない。
しかも、元親もする気満々だ。
やばい、奪われる。
唇奪われる・・・。



「理、ごめん」

元親がそっと私の耳元でそう呟いたとたんに、唇は重ねられた。
その途端に先程まで反対していた青年は部屋を出て行った。
重臣の人も複雑そうな感じだったけど、結局は許したようにひとつ溜息をついて出て行った。



「元親」
「理・・・悪いな」

長曾我部の為ならと私は首を横に振った。
そしてすぐだった。


元親が私を押し倒した。


「理、理」
「どうしたんだー、んん」

元親は衝動的にまた私の唇を塞いだ。
そして、舌を差し込み私の舌と絡ます。

私の方は抵抗しようにも腕を掴まれており、元親相手に力も敵うはずもなく。
ただされるがままだった。

私はこれをどう受け取ったらいいの?
そんなこともわからず私はただ元親に唇を奪われていた。



「・・・・・・んっ、ちか、やだっ・・・やめてよっ」


元親に私の声が聞こえたのはしばらくしてからだった。





  


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