29
日は本当に早く過ぎていくものだ。
長曾我部に来て初めての戦も早々に終わってしまい、遂に元親の見合いの日がやってきた。
どうやら、勝手に重臣の人たちが話し合って決めていたらしい。
元親を覗きに行くと綺麗に着飾っていたのが見えた。
「やっぱりあいつは顔がいいもんなー、やっぱり着飾ってなんぼのもんだな」
「そうだな、やっぱりアニキは何を着ても・・・って、孫八いつの間に」
「おいおい、気づかなかったのかよ」
此処で元親の次に私の話し相手である重に話しかけるとひどく驚かれた。
その驚き様に笑いそうになるが姿が元親にばれても面倒なので笑いは堪えた。
それにしても、見れば見るほど元親は列記とした大名だと思わせられる格好だった。
普段、半裸のくせに関わらず。
「アニキも遂に婚約か・・・」
「そうだな、お前らとしては寂しいのか?」
「まあ嫁さんに気がいっちまうこともある訳だ、仕方ねえだろー」
「・・・まあ軍に迷惑が掛からなければ俺としては何も言うつもりはねえよ、せいぜい幸せを祈ってやるだけだ」
「個人的には孫八が女でアニキに嫁いでくれたらよかったのになって思ったこともあったけどな」
私が女だと・・・。
思い返せば元親にさんざん言われてきたことだな。
今日で終わりだと思うと清々する。
でも、心のどこかで少し寂しかったりもする気がする。
「今になっては仕方ねえことだからな、行こうぜ孫八」
「おう・・・、」
清々するのは事実なのにあくまで私の中では寂しさの方が大きいらしい。
正直なところ、元親に此処まで自分を入れ込んでいたなんてびっくりだった。
「幸せ祈ってやらねえとな・・・」
ぐらぐらな誓いしかたてれなかった。
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