27

『アニキー』
『おう、何だ?』
『今更だけどアニキは何で孫八をずっと置こうとするんすか・・・元は敵だったのに』


戦前になって元親の部屋に行こうとしたところ、ふと聞こえた会話・・・。
元親が私を此処に置く理由は大してないとは思っているが、一領具足の人たちに不信感を抱かれていたというとなると少し自分でも何とも言えない気分に襲われる。


『孫八を置く理由か?』
『いや、置く理由っていうか、アニキの国で起きた戦の敵だったのにこう何にもしないっていうか。
 増してや軍師とかなら殺したって不思議じゃねえのに・・・』
『はっはっは、確かに言うとおりだ。
 俺がおかしくなってるって言いたいか?』
『いや、決してそんなつもりじゃー』
『俺はな孫八を前から知っててな、情けとかじゃなかったんだが殺せなかった。
 ・・・つってもあいつは俺のことあんまわかっちゃいねえんだが、わかりたくもねえか仇なんだし。
 まあ俺の中でもどうするか決心つかなかったつうことよ、もし孫八が何かしたってんなら俺が責任取るつもりだ』
『そうっすか・・・あ、そろそろ俺孫八呼んできやすっ!』



やばい来る、そう思って少し後ずさりしようとするが、裾を踏んでしまい尻もちをついた。
当然ドンという音が扉を越えて元親に届いたわけで、扉を開いた瞬間に見られ笑われた。


「おいおい、何やってんだよ」
「・・・べ、別に転んだだけだ」
「まあいい、呼ぶ手間も無かった訳だ。
 入れよ」
「おう」
「じゃあ俺はこれで」

そう言って出て行ていくのを見送って入れ替わり私が元親の部屋へ入った。

「で、さっきのどこまで聞いてた?」
「・・・・・・俺がいたのわかってたのか」
「まあな、伊達に戦場にでてねえってことだろ。
 お前のことだから言う気はねえか?」
「ああ。でも、ひとつ教えてくれ。
 俺はお前に餓鬼の頃あったことはあるか?」
「・・・・・・・・・それを今答えていいのか?」

やっぱり会ったことがあったのか。
その事実がわかったとしても私は元親に会った記憶が今のところなかった。

「悪いな、憶えてないんだ・・・」
「俺も変わったからな、元服さえなけりゃすぐにわかったかもしれねえが」
「元服でか?」

元服で変わることなんて名前と扱いぐらいじゃないのか?
扱いと言ってもその家のことだから所詮私には関係のないことだ。


「その理由は・・・いつかわかるときがくるんじゃねえか?
 お前が言ってた指切りの理由といっしょでな」


むうと項垂れる私を見て勝ち誇ったように笑いながら元親は言った。
指切りのことは諦めたのかどうか知らないけど、私は少し諦めが悪いようだった、




  


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