20

戻ってきた元親の手にはよくわからないものが見えていた。

「何だ、それ?」
「ああ、こいつか?
 鋏ってんだ、知らねぇのか。・・・まあ、まだ量産されてねぇから仕方ねぇか」
「それで・・・、はさみとやらで何をするんだ?」
「この前お前の髪を切っちまったからな・・・」

元親は私の前で屈み、前髪を撫でた。

「・・・?」
「切りそろえてやっから、ちょっと縁側に出ろ」

言われるままに縁側に出てそこに座った。
元親は下駄を履いて、私の前に立った。

大人しくしてろよ、そう言って私の髪に手を伸ばし、髪を切っていった。
すると、当たり前だが少量の髪が下に落ちる。



「前はそうとう長かったよな。男の振りしてるくせに」
「仕方ないだろう、一応簪できるくらいには常に保っていたかったんだ。
 それに此処の奴等は少ないが髷を結うには長い髪が必要だ」
「でもお前はしてねぇじゃねぇかよ」
「お館様がそれをしたらもう・・・戻れぬと言ったためだ。
 その優しさに逆らうことができるわけないだろうが」
「そうか・・・。
 よっと、終わったぜ」




鏡を見せられると器用に切りそろえられたのがわかった。

「器用なもんだな」
「へへっ、そうか?
 ・・・そういや簪付けれる長さにしてたのって何でなんだ?」
「・・・・・・そうだな、俺の昔話だが短くは無いぞ?」
「いいぜ、話してくれや」


元親はニッと笑って私の隣に腰かけた。

  


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