18
しばらく、馬に乗せられると長曾我部方の城が見えてきた。
「あれが岡豊城だ」
「ああ、それくらいは知っている。
言ってしまえば、この地で長曾我部殿を見たことも有る」
「そうか、俺もお前を見たな・・・っていうか、その呼び方止めろ、長曾我部殿っていうな」
「え、何で?」
長曾我部殿、
何が不満だ?
無礼も大してないだろうに。
「そういう堅苦しいのは嫌いなんだよ。
長いしな、元親って呼べ」
「いやいや、呼び捨ては無礼際なりないだろう」
「じゃあ俺は理って呼ぶぜ、いつでも」
それは駄目だ。
女であることがばれるかもしれない。
「・・・わかった、元親。
これでいいだろう」
「ああ、それは変えるなよ。
態度もそのままでいろ」
「それは問題ないのか?」
「大丈夫だ、心配性なもんだな」
「まあ軍師だからな・・・」
生憎心配性なのは生まれつきだ。
でも、そのほうが人間らしくていいだろう。
「やっと着いた」
門が開くところを見てホッと息を付くなり、度肝を抜かれた。
『アニキが帰ってきたぜー!!』
『アニキー、アニキー、アニキイイイイイイイイイ!!』
服を肌蹴させたたくさんの男たちが元親に向かってアニキー、と叫んでいた。
元親はそれを当たり前のように受け入れている。
「野郎共ー、今帰ったぜ!!
こいつは新入りだ、長曾我部軍の軍師だ!!」
『アニキが女を連れてきたー!!』
・・・いやいや、軍師って言っただろ。
今思いっきりこの人たち顔で判断しましたよね?
「俺は男だ!!」
そう叫んだ瞬間にがっかりした顔をした人たち。
・・・これはこれで失礼じゃないの?
「野郎共、こいつは男だ。
手え出すんじゃねえぞ?」
『俺らそっちの気はありませんことよ!!』
そのノリ何だ!!
思わず、吹いてしまった。
それを見て元親も笑った。
「やっぱりお前には笑顔が一番だな」
不覚にもその台詞にドキドキしてしまった私がいたというのは誰にも言えない話で。
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