17

私は必要最低限の荷物をまとめていた。
傍らには何故か長曾我部元親がいる。


「どういうつもりだったんだ?」
「何が?」
「俺を長曾我部に迎えるということだ」
「単純だ、お前が欲しかった。
 お前を傍に置きたかった」
「・・・男色か?」
「何でそうなる、だいたいお前は女だろうが!」
「・・・・・・あ」

いろんなことがありすぎて忘れていた。
そうだ、この男には私が女だということはとっくにばれていたんだ。


「それで、わかっての通り私は女だ。
 女をどうするんだ?」
「・・・そうだな、俺の嫁にでも来るか?」
「長曾我部殿は随分と冗談が好きなようだな・・・」
「まあ別に冗談でもないんだが。
 お前軍の中で働きたいか、それとも俺の妾にー・・・」
「至らぬところもあるだろうが、軍でお世話になります!!」
「・・・・・・ったく、何かと失礼だな」

何だか残念そうに笑った。
でも、それはそうだろ。
私には行くのにも目的があるんだから。


「それで、俺は軍ではお前を男として扱わないと駄目なのか?」
「当たり前だろう」
「じゃあ裏返したら軍以外では大丈夫だな?」
「それとこれとは話が違うだろう!
 ・・・話していたら疲れるぞ」
「はっはっは、まあな」



話をしているうちに荷物もまとめ終わり、部屋を出た。
そして、城まで出ようとすると長曾我部元親の方が止まった。

「若に挨拶はいいのか?」
「・・・挨拶ならさっきもした。
 それに別れじゃないんだ、また会えるんだ。
 確実にな・・・」

また会える・・・、
十数年前はそれは確実では無かったのにまた会えそうな気がした。
今となっては無茶なことだったと思う。
でも、今回は違う。
命ある限り、若様には何度だって会うことができる。

・・・そう考えたら、私の中で弥三郎の存在は大きかったんだと思える。


「では、参ろうか?」
「ああ、そうだな」

こうして、私は門を出て本山の城にまたな、と言った。
また大切な人たちに会えることを願って。

  


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