13
城に帰るも寝つけられる訳もなく、私は起きて策を練っていた。
理想が無理だと打ち付けられた今、良い考えが浮かんでこない。
・・・これが挫折だったらどうしよう。
弱気にもなってしまう。
でも、それでも。
お館様に勝利を!
その一心で私はただただ考え込んでいた。
ようやく、何となく考えがまとまってきたか、そう思った時だった。
「吉良殿!大変だ!
長曾我部の奇襲だ!!」
「何っ!?」
こんな時刻に?
急いで、鎧を身に着けて駆けつけてみるもあたりは屍ばかり。
遅かったか・・・。
でも、お館様の姿が見当たらない。
前線に立つという長曾我部元親でさえも。
瞬間、寒気がした。
何か悪い予感がした。
「お館様!!」
私は何処にいるのかわからないお館様を探し、走り回った。
だが、見つからない。
そんな時だった。
どこかからか、金属がぶつかり合う音が聴こえた。
海辺から聴こえてくるということを理解し、急いで駆け付けた。
そこには大将同士で刀をぶつけているところが見えた。
「お館様、どうしてっ!」
「理、こちらへは来るな」
「でも、全ては俺の責任ですっ」
「いいから黙っておれ!」
お館様の怒鳴り声につい食い下がってしまった。
周りには私以外誰もいない。
今私が後ろから長曾我部元親をどうにかしようと思えばできるかもしれない。
でも、私はどうにもできなかった。
「あいつとしゃべるか?」
「ふっ、敵にそのようなことをするのか?」
「俺は敵だろうが、味方だろうがそんなことをする奴だ、生憎だがな」
「面白い・・・
此処で出会いたくなかったものよ」
「そうだな、俺もそう思ってるぜ」
「なら、さっさとかたをつけようぞ」
恐れている私がいる反面、二人はどこか楽しそうな気さえした。
これは私がおかしいのか、二人がおかしいのか・・・。
今の私には判断ができない。
ただ金属がぶつかり合う音が鳴り響いていた。
だんだんお館様の方が不利になっていた。
向こうはまだまだ若い22歳、お館様はそろそろ年と言っても過言では無い年齢だ。
いくらなんでも体力の差がある。
「これで終わりだ!」
「っ!」
「お館様ああああああああ!!」
長曾我部元親の碇のような槍がお館様に突き付けられようとする瞬間、私は駆け付けたが遅かった。
槍はお館様の腹を刺した。
私の顔に少なからず、お館様の血がとんだ。
すぐに駆け寄るが、もう既にお館様がぐったりとしていることはわかった。
「お、やかたさま・・・お館様あああああああ!!」
「・・・・・・理、落ち着け。
儂もこうなることぐらい、わかっておった。
だが、そなたを残していくのは心残りだ」
私はお館様の手をぎゅっと握った。
お館様はその手で私の涙を拭い、優しく笑った。
「いや、いやです。
死なないでください、俺を残していかないでくださいっ」
「・・・すまんな、そなたには迷惑を掛ける。
そなたに無理をさせて申し訳にない。
男として育ててきたが、ずっと娘のように思っておった。
もう、女として生きよ」
「何を言っておられますか!
俺は生涯本山の男です!!お館様あっての俺なんですっ、お館様・・・」
「幸せになれ・・・」
お館様は最期の言葉を残し、息を引き取った。
「おやかた、さまあああああああああ!!」
涙が止まらなかった。
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