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私が帰ったころには城はがやがやとしていた。
すぐに女装を解いて、いつもの袴に着替えて大広間に行ってみるとお館様を始とし、重臣の方などが集まっていた。


「おお、吉良殿やっと帰ってきたか。
 さっそくだが、お話を伺いたい」
「畏まりました・・・」

身分の高い方までが話を聞く中、私は口を開いて話し始めた。


「岡豊の様子でございますが・・・
 山があり、戦には此方側には不利となると思われます。
 攻めるとなれば、城攻めが無難となってくると思われます・・・−」

誰も私の言うことに口は挟まない。
それほど、真剣だった。

「これからは私情を出してしまいますが・・・
 よろしいでしょうか、お館様?」
「ああ、良い」
「私が見てきた岡豊の町民は誰彼も活気がありまして、その空気を壊しとうないと思いました。
 そして、その町民は皆、領主長曾我部元親を好いておられました。
 私としては和平、とまではいかなくても平和にこの場を治めたいと思った所存でございます」

誰も何も言わない。
それは、私の言っていることが間違っているから。
正直、今になって後悔が込み上げてくる。


「孫八よ・・・それはどれほど甘い考えかわかっておるか?」
「お、お館様・・・っ、わかっております!」
「確かに・・・儂はそなたのそのように情が厚く、義理堅い考え方は好きだ。
 しかし、これまでとは違うのだ・・・此度の戦は。
 そなたはこの場にいる全員を納得させられるか?」
「仰せのとおりでございます・・・
 私の申したこと、甘い考えでございます・・・」

情、義理・・・この場では関係のない話だ。
増してや、邪魔にもなってしまう。


「お館様、某は吉良殿の意見を少しでも出しとうございますが・・・」
「ほお・・・どのような考えだ。
 言ってみよ」
「ただ長曾我部を滅ぼしても、民が一揆を起こす可能性が見受けられます。
 だから、戦はするにしても、むこうを降伏させれば、吉良殿の意見は通ると思われます」
「・・・それで、その方法を軍師である孫八に考えさすということか?」
「そうでございます」


その意見にはお館様も納得がいったらしい。
髭を撫でながら、何度か肯いた。

「ならば、孫八。
 その策を作ってみよ、そなたが理想叶えるために」
「仰せのままに!
 必ずや、果たして参ります」


案を出してくれた方に深く頭を下げて、私は勢いよく大広間を出た。

  


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