17.あなたの隣

「小十郎に聞いたが…約束が認識違いだったってな」
「私も聞いたときには驚きました」



『俺は…俺、はっ…必ず、立派な男になって、国を…治め、治めるから。
 だから、名前っ!……っ、その手に、幸せ掴ませてやっから、待ってろっ』


『私に治世を見せてください、そして梵天丸様の幸せをどうか握らせてください』


『…ああ、俺の命に懸けても見せてやる。名前も民も、誰かれ構わず全員幸せにする。
 約束だ』



あの約束でまさか政宗様が私と婚姻を結ぶことを考えていらっしゃるなんて思ってもみなかった。女の幸せが好きな殿方と添い遂げること、そう言われたら納得できるけどあの幼少期でそんなことを考えるとは。


「しかし、政宗様。気持ちではどうしようもできないことがございます。
 今度は忘れたとは言わせませんよ…田村との婚姻」
「そのことか…俺だって考えたぜ」
「え!?」
「意外そうな顔しやがって…。
 田村との婚姻、そりゃ奥州を落ち着かせるに大事なことかもしれねえ。民と名前を天秤にかけようともした。だが、そのこと自体が間違ってんだって気付いた」


まさに私が考えていたことを政宗様も考えていたらしく、それはホッとする。
同時にそれだけ私のことを考えていたということだと思うと恥ずかしいような、嬉しいようなそんな感じがする。


「奥州なんて小せえ。天下を取れば田村なんて関係ない。破談だ。
 俺は天下を取る男だ、だから隣には名前がいればいいんだよ。わかったな」
「隣が私でいいのですか?」
「俺をしごけるのも名前ぐらいだろ。逃げようたって必ず捕まえてやる。名前は俺のもんだ。
 …俺は名前がいいんだよ」


私が政宗様に寄り添ってもいい。
政宗様が隣にいろと言ってくださっている、私なんかを。


「私も、政宗様のお隣にいたいです」
「約束果たさねえ男がどこにいる?んな男がいたら名前に説教喰らっちまうだろ」
「もう…そうですね、女を泣かせる殿方など私は許しません」
「だろ?」


いつもは引かれる手も今日は私が引いて。
背伸びをして触れたお互いの唇。

政宗様が満足そうに笑うと恥ずかしいけれど、それでも政宗様の気持ちを改めて自覚させられる。
隣にいられるのなら、そんなことぐらい何度だって覚悟せねばならない。



だけどその覚悟が私の幸せになっていくのだろう。
笑う政宗様の隣、それ以上何も望むものはないのだから。






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はい、というわけで最終話でした\(^^)/
リクエストをお受けして書かせていただいた政宗長編でしたが、楽しんでいただけたら幸いです
最後まで読んで下さりありがとうございました!!!!!




    


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