15.眠る主に去る来客者

だだちゃ豆やら塩やらもち米やらを用意し終わった頃には綺麗に洗った手を平げて見せるいつきちゃんがいた。
その後いつも通りにずんだ餅を作り終わったわけで。
やっぱり農民の子って日頃いろんな作業してるから器用なのか、いつきちゃんのずんだ餅も綺麗にできていた。


「政宗様にも食べさせないといけいないけど、せっかく作ったしお家に持って帰ってね」
「やった!みんな喜ぶだ!」
「うん。じゃあこれを、よいしょっ、ほいっ」


箱に詰めて風呂敷で包み、お持ち帰り用を作る。
少しだけ残った分を更に並べ、いつきちゃんにも食べるように促す。


「おらがいいのか?これ政宗用にって…」
「いいのいいの。ここだけの話、私もそれなりに長く作ってはいるものの私より政宗様が作るほうが美味しくて…だからあんまり食べさせたくはないんだよね。 
 だから良かったら私の作った方食べて」
「そ、それは駄目だべ!さすがにおら小さくても駄目だってわかるべ! 
 おらがいうことじゃねえけど、そういうのはやっぱり愛情が大事だって思うだ…」


手をぶんぶんと振って否定すると、遠慮してか自分が作った方を食べたいつきちゃん。
小さい子にここまで言われてしまうなんて、私としてもなんとも情けない。
父上にあれだけ武士の志を習ってきた身なのに、こんな小さなことでくよくよしてしまうなんて。



「わかった…じゃあ政宗様に食べてもらう」
「その意気が大事だべ」
「うん、ありがとう」


そんなわけで、政宗様の部屋に戻った訳だけど文机に向かってはいるものの、ばっちり眠っていた。


「あらまあ…ごめんね、いつきちゃん。このお方、人を呼んでおいて一人寝るなんて」
「ううん、おらはねえちゃんと作るの楽しかったから今日ここにこれて良かっただ。お土産もらったし、そろそろお暇するべ」
「そっか、また来てね。また一緒にずんだ餅作ろうか」
「うん、また作るだ」


そのまま政宗様の部屋を後にして、途中ばったり会った小十郎さんがいつきちゃんを送っていくと言う。
なので、城門でお別れになってしまったけれど。
なんだかまた会うんだろうなと不思議とそう思った。

城門前で大きく手を振っているといつきちゃんと小十郎さんを乗せた馬がだんだん小さくなっていった。既に夕暮れ。今日はいい一日だった。






  


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