12.解放

いつもの勝ち戦。
だけど今回はうまくいかなかった上に、大変だったらしい。しかも政宗様自身怪我を負ったとか。


いつものように部屋へ呼ばれ、素直に応じる。
すぐに休んで欲しいというのに、私は応じてしまう。


「此度の戦お疲れ様でした」
「んな言葉はいらねえ。来い、名前」


来い、と言われながらも半端強引に引き寄せられた。
いつもとは違う様子に戸惑いながら距離を縮める。


「…政宗様、お休みになられた方がよろしいのではないですか」
「名前」
「は、はい」
「何に囚われてる」


私自身すぐに戻ったつもりだったのに。
今政宗様の方が大変な状態だというのに。



「私は…私は…」


私は何に囚われているのだろう。
わからない。
何に未練があるのだろう。


「自分のことわかってねえんだろ」
「…お見通しですか」
「名前は何のために生きている?」
「それは伊達のため―」
「確かに伊達のために、俺のために生きろとは言った。だが、自分を見失うな。
 そうじゃねえと幸せにできるもんもできねえ。忘れたとは言わせねえ、この手に幸せ掴ませてやるっつう約束」


私の手を取るとぎゅっと握った。



『俺は…俺、はっ…必ず、立派な男になって、国を…治め、治めるから。
 だから、名前っ!……っ、その手に、幸せ掴ませてやっから、待ってろっ』

『私に治世を見せてください、そして梵天丸様の幸せをどうか握らせてください』

『…ああ、俺の命に懸けても見せてやる。名前も民も、誰かれ構わず全員幸せにする。
 約束だ』




「覚えていらっしゃったんですね」
「忘れるわけがねえだろ」
「さすがですね」
「HA!やっと笑ったか」


私のために、休むべき人が。
どんだけありがたいんだろう。自然と肩の荷もおりた気がする。


「こんな私のために」
「名前だからに決まってんだろ。好きな女との約束も覚えらんねえ男のどこが男だ」
「…………え?」


一瞬聞き流しそうになったけれど、確かに耳に届いた違和感。


「まさか気付かなかったってか?」
「冗談ですよね?」
「いつだって俺は本気だぜ」


顎を捉えられてまたいつもみたいに額に落ちると思った口付けは初めて唇に落ちた。
想ってはいけない相手だというのに不覚にも胸の鼓動は強くなるのだった。






  


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