11.宙ぶらりん
「名前、気をどこにやっている」
「へっ…申し訳ございませぬ」
父上が殉死してからしばらくしてのこと、政宗様が弔い合戦へ出た。
政宗様のこと、輝宗様を思いつつも万全の体制で戦に望んでおられるのだろう。左月様だっておられる、大丈夫だ。何も心配はいらない。
だというのに私の心はどこにいるのだろう。
定まらない。
父上の死に未だ囚われているわけではない。
政宗様の涙に未だに囚われているわけではない。
こんなことでは父上に合わす顔などないというのに。
それに、政宗様に伊達のために生きると言った身、こんな状態情けない。
政宗様が戻ってきたらいつもの私に戻る。絶対に。
だから、いいだろうか。
今だけは。
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