記念日を共に
今日で元親と付き合い始めて一年。
幸い相性がいいのかマンネリ化もなく続いてた訳だ、記念日なんだからデートしようと言うまでは。
この一週間元親にせっかくだから何か奢ってやれるぐらいには頑張ろうとバイトを平日まで入れてみた。
すると元親といるのは学校の休み時間だけという訳でよく一緒に帰ってた時と比べると明らかにふれあいが減った。
そのせいなのかわからないけど・・・元親の態度が気のせいかもしれないけど素っ気なくなってきたような気がした。
「元親・・・」
「ん?」
今だってだいぶ素っ気ない。
元親が悪くないとか当たり前だし、わかってるけど寂しく思ってしまう私がいる。
「どうしたんだよ、さっきからんな顔して」
「え・・・あ、ごめん。
元親、次何処行く?」
「言い出しっぺのくせに決めてなかったのかよ。
まあ名前らしいか」
「うん、そうだね・・・ははっ」
もう今の時点で私の顔が引きつってると言うことはわかってる。
でも元親の態度が変わってしまったのはわからなかった。
朝からバイトの疲れがたまって体力が満タンな訳でもないし、元親の態度も寂しいし・・・心身ともにすっかり冷えてしまってきたみたいで無性に泣きたくなった。
「大丈夫か?
どっかで座るか?」
「うん。大丈夫だけど。
ちょっとどこかで座りたい」
「じゃ近くの公園でいいか、日陰もあるしな」
冷静になりながらも私を心配してくれるだけで凄く嬉しくなってしまう。
本当に私は元親が好きだと思う。
元親は私を好きでいてくれてるの・・・?
そんな不安を今の私は隠しきれなかった。
公園に付くと元親によって即座に日陰のベンチに座らされた。
元親の肩に凭れながら少し顔を覗いてみるが元親にいつものような笑顔はなかった。
「元親、私何か悪いことした?」
「いいや、名前に何かされた覚えはねえぞ・・・って、どうした!?」
「へ・・・?」
元親の手が顔に触れると目元を指で擦った。
頬に冷たい感覚が伝わると自分が泣いてしまったんだということがわかる。
「私、やっぱり元親好きだよ・・・大好きなんだよ・・・」
「俺だって名前のこと好きだ」
「でも、最近私の態度が・・・変わった?」
「ああ・・・」
思い当る節はあるらしい。
それだとわざと素っ気なくなったという訳で、それは。
それはー、の続きは考えたくない言葉しか出てこない。
「名前、俺さー・・・」
「聞きたくないっ!」
お前さんのことが嫌になったから別れてくれ、そんな言葉が元親の口から出るなんて受け入れられなくて反射的に耳を塞いだ。
同時に目もぎゅっと瞑った。
元親が耳の手を離させたときまではもう私は涙が本当に止まらなかった。
「だから、好きなんだよ!
俺がべたべたしすぎたから今週ずっと避けられたんじゃないかって思って、それで別れたくもねえし・・・」
予想外の言葉に一瞬呆気に取られたのは私の方だった。
元親が素っ気なくしてたのは私のこと好きでいてくれるから。
何だかそれがおかしくて、嬉しくて笑ってしまった。
「元親の馬鹿!馬鹿!」
「いや、馬鹿って言われてもな・・・」
「私が嫌になる訳ないじゃないの、今日だって凄く楽しみにしてたし。
バイトいれたのだって今日元親に何か奢れたらいいなって思ってたし、それにー・・・」
「もういい」
瞬間に元親が私を強く抱きしめた。
腕の力は強すぎて体が痛いくらいだ。
それでも、私にとってはそれが元親の抱擁であってそれを自らでも子供が欲しがるみたいにしがみついていた。
「元親・・・」
「俺は名前と一緒にいれるだけでいいんだよ、逆に離れちまうとほんと足りなくなっちまう・・・もっと触れていいんだよな?」
「うん」
私が発した文字はたったの二文字。
だけど、元親にはその中に”私だって足りないんだよ””もっと触れて””私だけを見て”
そんな子供じみた私の気持ちもわかってるだろう。
「ちゃんと足りねえ分貰っとかねえとな。
あ、反論は認めねえぜ?」
「じゃあさせないようにしてよ」
ちゃんと私の意図を察して笑い、それから元親は息さえも認めないように少し強引に口付けを落とした。
そんな焦ったような元親の強引な口付けに付き合い始めたばかりのころを思い出して、お互いに笑った。
ずっと一緒にいる、そんな未来を願いながら。
きっと私の恋は元親で終わるんだ。
そう思うと元親に適う事は無いんだろうなとか苦笑いしながらなんだか嬉しくなった私だった。
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甘いのということで頑張ってみましたが甘いのかなとか不安になったり・・・
だからリベンジさせてもらうかもです!!
元親がへたれな気もしますがそれはそれで楽しんでいただければ幸いです。
遅くなってしまいましたが、零様キリリクありがとうございました!
気に入りませんでしたら変えろの一言で書き直します
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