番長さんは不良さんではありませんでした

「ちょっくら付き合ってくれねぇか!!?」




帰ろうとしている中、うちの学校の番長さん・・・、もとい長曾我部元親にそう言われた、というか叫ばれた。
咄嗟のことで固まってしまったが、冷や汗は流れだした。
相手が相手の為周りの視線も痛い。
だから、早く終わらせたいという思いが勇気の源になって目の前にいる番長さんに声を掛けた。

「えと、私ですか?」
「おう、その、いきなりで悪いんだが」


私の額から出る冷や汗が止まらない。
私、えっ、何かされるの?
何もしてないよ?
最近睨まれたりすることも多かったなって思うこともあった。
でも・・・私何もしてないよ!
本当に何もしてませんからっ!!

「あー・・・時間ねぇか?
 それなら仕方ねぇんだが・・・」

”仕方ねぇ”、何が!?
”仕方ねぇから今日が無理なら別の日に倍にして殺ってやる”、ってこと!?
助けて!
・・・でも、倍にされるくらいなら今日の方が。

「時間有ります!超暇です!
 何処へでも連れて行ってください!!
 ・・・・・・・・・できたら、痛いことはしないでください」

最初は周りがビクッとするほど大きな声で、最後の私の言葉は震えていた。
しかし、番長さんには聞き取れなかったと思う。

『アニキ!さすがアニキだ!!』

子分さんたちの声がめっちゃ聞こえてきたから。
というか、私の返事で番長さん何か凄いいい笑顔になったもんだから、一瞬ドキってしちゃったよ。
・・・・・・これからリンチされると思わなかったら、この人が番長さんでなければ、きっと幸せフラグが立ってただろうにね。



「じゃあ行くか!」
「あ、はい」

腕を掴まれて引っ張られる私を見ながら周りの人たちはササッと道を開けた。
知り合いからは”good luck”と私に親指を立てられた。

まあ、そんなことを番長さんを前にして言えるはずもなく私は黙って付いて行った。
それからバイクに乗せられて番長さんのバイクは走る、走る・・・。

生まれ変わったら鳥になりたいな・・・。
バイクが走る中、私はずっとそんなことを考えていた。
海沿いの道路まで来て何処まで行くんだろうとか考えてたら、ちょうどバイクが止められる所で止まった。

・・・・・・・・海・・・・・・・・・・・・・・・・?
え、何これ死亡フラグ?
日本は何時からそんな物騒な国になった!!?


「ほら、降りろよ」

やけに笑顔なんですけど。

バイクから下りるけど私はもう笑えない状態だ。
そんな私に気が付いてか、番長さんが苦笑した。

「・・・やっぱりいきなり連れてくるってのも迷惑な話だったよな、悪ぃ」
「い、いえっ」
「アンタを連れてきたってのはな、言いたいことがあって。
 で、言うのにも学校じゃ俺素直になれなくてな」
「はあ・・・」

私には番長さんの言っている意味の半分も、いや、ほとんど理解できず曖昧な返事を返すことしかできかった。
そんな私に番長さんは向き直った。

「名字・・・俺はアンタが好きだ」
「そうですか・・・、・・・・・・ええっ!!?」

予想外の言葉に思わず目を丸くする。

「んな、驚かなくてもいいだろうが・・・」
「え、いや、だって最近めっちゃ睨んでませんでしたか?」
「目で追ってただけだ、目つきが悪いのは元からだ」
「でも、え、でも、私を・・・?」
「そういうところだよ」
「へ?」
「アンタが無自覚でそんな態度ばっか取るから。
 ・・・覚えてねぇかもしれねぇが、クラス替えの日俺アンタと同じクラスになってそれから惚れちまった」

クラス替えの日?
残念ながら私には番長さんと同じクラスでも話した記憶は皆無だ。
別の人なんじゃ・・・。

「アンタの友人が俺と一緒のクラスになって最悪だー、とか言ってただろ」
「あー・・・、そういえばありました」
「そん時にだアンタ・・・笑って”いいじゃん、同じクラスだったら守ってくれそうにない?”とか言ってて・・・」

うわー、私は何馬鹿なこと言ってたんだ。

「そんでまあ初めは何馬鹿なこと言ってんだとか思った訳だ」
「御尤もです・・・」
「はっは、んな暗ぇ顔すんなって。
 でもな、そん時俺、何故かそう思われんのちょっくら嬉しくってな。
 それから、アンタを目で追うようになって、馬鹿だなって思うこともあったけど可愛いとかそういうこと思うようになってきて・・・・・・今に至る」

”今に至る”のところで番長さん頬を赤く染めながらそっぽを向くもんだから私までだんだん恥ずかしさが湧いてきた。

「え、えっとー・・・長曾我部君?」
「お、おう!」
「何だかんだで話すのは初めてだから悪いけど友達からで・・・」
「・・・まあそう来る可能性もあんじゃねぇかとも思ってた訳だが。
 じゃあ名前、これからよろしくな」

そう言って番長さんもとい、長曾我部君は私の頬にチュッとリップ音をさせてキスをした。

「っー!!?」
「これぐらいのサービスだっていいじゃねぇか!」

ははっ、と笑いながらもだいぶ頬を赤らませている長曾我部君。
・・・・・・何かもの凄く可愛いいんだけど!?
もう自分にされたことがどうでもよくなるくらいに可愛い。

「チカちゃーん」

長曾我部君が可愛すぎて私が彼を無我夢中で抱きしめてしまったのは学校の伝説になったり、ならなかったり・・・。
私が抱きしめた時に長曾我部君の顔がもっと赤くなったのは言うまでもない。
長曾我部君が可愛いのが仕方ないんだよ、私は悪くない。


うちの学校の番長さんはとっても乙女な番長さんでした。


###
やっぱりうちの元親はへタレです、すいませんっ!
こんな元親で、こんな駄作でよろしければお納めください。

山下様、本当にリクエスト有難う御座いました!!
気に入りませんでしたら変えろの一言で書き直しますです








    


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -