夜中の温

雨が降れば表の人間は部屋に篭るというのに、裏の人間、すなわち忍は天気など関係なく地を飛び回る。


「また体が冷えたまま来て…兄様はそんなに佐助をこき使うのですか」


真田忍隊の長、猿飛佐助。
我が兄幸村の命に従っては命も惜しまずに動く。
そんな佐助を私だって口には出さずとも尊敬することはあるけれど雨の日はどうももう少し体を気遣えと言いたくなってしまう。
私が幼い時寂しいと一言言った夜から佐助は律儀に私の部屋へ来ているのだけれど、雨の日雪の日…勿論関係なく来る。
するとだんだんと佐助の冷えた体に手を伸ばす度に罪悪感が沸く。




「旦那も俺様に休みをくれたらいいのにね、なーんて」
「佐助…。
 今までこの十数年間私のためにありがとう」
「いきなりどうしちゃったのさ」

佐助の手を温めようと自分の頬に当てる。
あ、やっぱり冷たい。


「私もう寂しくないよ、だから―」
「待って!…俺様が寂しい」
「え?」


佐助は空いた手で私の口を塞ぎ、言葉をつまらせる。

「旦那のね仕事もそりゃきついのもたっくさんあるわけよ。
 でもね、名前ちゃんの顔見て落ち着く夜もたっくさんあるの、俺様が言ってる意味わかる?」


ね、と片目を閉じる佐助。
私としてはその言葉は凄く嬉しかった。
だけど佐助の住む屋敷から私のところまで来るのにも体力は使わなければならないわけで。
もちろん、佐助の負担は減らない…むしろ増えてしまう。



「だってこんなに体が冷えるのに」
「俺様忍ですから、そんなやわな体じゃないよ」
「だって私なんの見返りもできないんだよ」
「じゃあ嫌じゃなかったら抱きしめていい?」


嫌なわけがなかった。
毎晩毎晩私の元へ私のためだけに来てくれる佐助に。
好意を持つなと言う方が無理だった。


佐助の逞しい腕に抱かれれば私の心配事だって軽く思えてしまう。


「風呂に入るよりあったかいよ」
「本当?」
「ちゃんと見返りになってるからね。
 俺様としてはこのまま唇も奪っちゃいところなんだけど?」


そう言って意地悪そうに笑う佐助は腕の力を込めた。
恥ずかしくなった私佐助を男だと自覚するのには時間はかからなかった。



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朱陽様遅くなってすいません(´Д`;)
リクエスト頂いてかっこいい佐助を目指してみましたが私の中での佐助って本当にオカンとか不憫とかのイメージが強いようです…
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです
キリリクありがとうございました!!





  


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