君がいる世界

やっと一週間が終わって体は疲れているというのに何だか家に帰る気がしなかった。
何ていうのだろう、こう・・・せっかく一週間終わったというのにこのまま帰るのはなんだか損している気になるというか。

そんなときはなんとなく家の近所の公園に寄ってから帰る。
そんなときといってもだいたい毎週で、それは親にも笑われていたりするのだけれど。

それでも懲りずに私は毎週公園に寄って、夜空を見上げてしまうのだ。


「ああ、暗いな・・・」


いつも思ってしまうけれど、夜空は本当に暗い。
街の明かりが明るい分、星が見えないので暗い。

よく空に吸い込まれてしまいそう・・・だなんて表現があるけれど、私は吸い込まれたいと思ってしまう。
別に生きているのが辛いとか、嫌だとか、そんな気持ちがなくても空を見上げれば自分がとてつもなくちっぽけに思えしまってここではない世界に憧れてしまう。


「なんて思ってる自分はおかしいんだろうね?」

独り言のように呟いた時だった。


「Ah-・・・名前はおかしいのか?」

後ろから聞き覚えのない声が聞こえた。
反射的に後ろを振り返ってみたのだけれど、見覚えのない右目に眼帯を付けたかっこいい男の子。
男の子といっても年は私より少し下ぐらいだろうか。


「Long time no see.」
「・・・え、誰ですか?」
「確かに長い間あってはなかったけど覚えてねえのはひどいんじゃねえか、Honey?」
「お会いしたことありますか?」

英語混じりの日本語に慣れなくて戸惑ってしまい、Honeyなんて呼ばれたことをスルーしてしまった。
だけど、今問題はそこじゃなくて!


「伊達政宗・・・それが俺の名前だ」

伊達政宗・・・。
あ、しっかりと聞き覚えのある名前だった。
小さい頃によく遊んだ政宗くん。
もう本当に可愛くていつも私の後ろに付いてた政宗くん。
でも家引越ししちゃって随分会ってなかった。

「あらあらあらあら、もう政宗くんこんなに大きくなっちゃってー」

過去の記憶がよぎり、言葉と同時に手が出て頭を撫でていた。
まあ年齢も年齢ですぐに手を止められてしまったのだけれど・・・。
少し残念ではあるけれど、今の反応も可愛いかったのでよしとする。



「それでどうしたの?」
「名前の家に久々に行ってみりゃ迎えに行ってくれって言われてな」
「それはそれはご苦労様です、じゃあ帰ろっか」
「まあそうしたいのは山々なんだが・・・さっきの言葉が気になって仕方ねえ。
 名前、自分で何がおかしいって言ってたんだ?」

そうだ・・・聞かれてたんだった、自分でも意味がわからない言葉。
大した意味はないと言葉を濁そうとするけれど、政宗くんの腕に捕まったのが最後。




「それで?」
「・・・・・・なんかちっぽけなこの世界よりも違う世界に憧れた、みたいな?」
「HA!何かと思えば・・・俺はアンタがそんなこと考えてたのは多少は驚いたけどな」
「え?」
「昔は後先何も考えてなかったじゃねえか、俺も後ろから付いてはらはらしてたし」
「なっ」

ならその時に言ってくれれば良かったのにとふくれてしまう。
だって何も言わずについて来てたんだもん。
一方的に可愛いって愛でてばかりいた私も私だったけどね。


「それで、とりあえずずっと同じ環境で飽きたってことか?」
「そう言われたらなんだか普通な感じだね、私」
「そこ以外にもおかしなところはありそうだけどな・・・まあいい。
 言い忘れたが俺こっちに帰ってきたんだよ。
 だから今日からは俺だけを見てろ」

え?
一瞬言葉を失った。
あの可愛い政宗くんがそんな俺様みたいなこというわけがない。
いうわけが・・・


「答えにNO.は認めない」
「・・・何様なのっ」
「退屈はさせねえぜ、Honey?」

何がどう間違えてあのピュアで可愛い可愛い政宗くんがこうなってしまったの?
あとさっきからHoney呼びするのはちゃんと意味があってなの?


いろんな思いが入り混じる。

でも手を取られてまじまじと見つめられると政宗くんしか見えなくなって頷いてしまうのだった。




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遅くなってごめんなさい!
何だか一方的にどうしてこう育ったみたいな感じですが、ちゃんと俺様になっておりますでしょうか・・・(;´∀`)
ちなみに思いっきり余談ですが政宗の俺様ときて脳内で小十郎の声で「政宗様」と聞こえました
蒼月銀牙様、キリリクありがとうございました!!






  


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