夢見
成人式があったということで私は朝早くから出て昼一度帰ってまた夜中学や高校で一緒だった友達と飲みにいったりしていたのだけれど、ずっと家にいなかったわけだ。
勿論家の前の道にいたということはなかったのだ。
というわけで今日全然元親さんと会えず。
朝会えたらいいなとか思っていたけれど昨日の夜遅くまで電気が付いていたので無理矢理に会いたいなんて言えなかった。
また振袖なんかは昔何度も元親さんには見せた。
今更ということで何も言えなかった。
でも……会いたい。
そんな矛盾した思いに後悔しながら友達とお酒を飲んでいた。
周りは時間が経つにつれて盛り上がっていくけれど私はもうへろへろになってきた時だった。
「名前!退場!!」
「へ…?」
いきなりびしっと指を指されて、鞄を持たされて個室から追い出された。
新たないじめ?なにこれ?
なんて思って出されたところで人とぶつかり、顔を上げてみればとっても見覚えのある人。
「あれ、元親さんが見える…」
「おうよ、俺だぜ!
…あ、ありがとな、名前呼んでもらって。
よし帰るぞ」
「え、あれ、元親さんだ、えへへ、元親さん」
私に手を振る友達を背に、元親さんに繋がれた手によって強制送還。
状況にはついていけなかったけれど、でも本当のところ願ったり叶ったりだから僅かに残った意識で手を握り返した。
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「おふくろさんから名前は酒弱いから迎えに行ってやってくれって言われてな」
「えー、私お酒弱くなかないれすよー」
「呂律回ってねえくせに下手に言うな。
だいたい土佐じゃあ女も酒好きが多いんだからよ…」
とんっと軽く指で額を押される。
反射的に額を押さえたら体がよろける。
そして、元親さんが受け止めてくれてなんとか姿勢を正す。
「大丈夫か?」
「はい!
元親さんが近くにいるから、えへへ」
「こりゃ駄目だな。
一回近くのベンチでも座るか」
本当は帰らせたいかもしれないけれど元親さんと一緒にいられる時間が長くなって私のテンションは上がる。
そして、酒の効果か体が勝手に動いて公園のベンチに座った時には自分から抱きついていた。
「えへへー、元親さん大好きげったー」
「いつの間に覚えたんだ?」
「友達から教えてもらいました、おすすめだって」
「…まあその友達大事にしとけ。
それより、成人になった名前ちゃんよう、大人になったら元親って呼ぶ約束だろ?」
「っ!」
約束は守れ、そんな目をする元親さんに酔いが何故か一気に冷めた。
少し冷や汗も出てしまうぐらいに。
それほどまでに私にとっては難関だというのに。
だって様付けからさん付けになって、呼び捨て。
「あの、もうちょっと」
「もうなしだ。
昔とは違うんだ、昔と一緒なのは気持ちだけだ」
「変な感じになってもいい?」
「結婚相手に言う台詞かよ」
「…元親」
元親さんの視線に促されてそう呼んでみたのはいいけれど恥ずかしい。
思わず顔を逸らしてしまったけれど元親さんがそれを許さず、顎を捉えて唇を奪った。
「もう、元親…」
「よく言えました、と。
どうする、おふくろさんから戸締りが面倒だから名前がうちに泊まっていいつう許可は出てるが俺の家に来るか?」
「母さんは本当にもう」
わかってる、成人の日ぐらいという。
そして、出る答えももう決まってる。
「元親と…ずっと一緒にいたい」
「おうよ、本当俺もう名前には敵わねえな」
「こっちだってあの時から惚れた弱みなんだから」
「馬鹿野郎、こっちだって同じだ」
やっぱり何度生まれ変わたって元親が愛おしい。
元親には敵わない。
大好きで、大好きで、大好きで…。
次に夢見るのはただ二人でずっと笑っていられる未来だった。
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『昔のお前にもう一度』のヒロインとうとう二十歳ということでしたが…ちょっと成長できましたでしょうか?
おもいっきり成人式でやっちゃいましたけれど、とりあえず元親は環境にも何にも流されずにベタ惚れだったらいいと思ってます笑
レイ様リクエストありがとうございました!!
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