恋は盲目*

私の部の係長は涙が出るほど素晴らしい人だった。
現に今本当に心の底から泣きそうなのだけれども。


「ほら気にすんなって、俺は小せえことは気にしてねえからよ、な名字?」

そう言って慰めてくださっていて心底感激しているのだけれども、気にするのはどうしても私の方だ。
尊敬していて、しかも好きな人なら尚更。





事の起こりは今から数時間前。

うちの会社は何を考えているのか、おかしな方針があった。
まだ半人前の社員が企画を立てたければ、絶対に上司と二人三脚で企画に取り組む方針。
そして、先日昼食をたまたま同じところで取っていた憧れの長曾我部係長と話していてなんとなく仕事の話していれば、褒めてもらえて盛り上がって…気付ば係長と二人三脚。
嬉しい話だけれど、正直そこまで優秀な社員でもない私は部の部長からも頼りにされる係長と二人三脚というのは気が進まなかった。


そして結局二人三脚でやってきて、明日の朝に提出の企画書が今日、やっと残業もしてできた。
保存しようとした時に事件は起こった。
いざ保存しようとする前に私は何を思ったのか、触れてしまった電源ボタンに私の手元に残ったUSB。
その結果バックアップ取れなかった以前にデータが消えた。

そんなことがあり、係長がわざわざ残ってくださって今私は泣きそうになりながらも企画書を必死で完成した状態目指して作り直してしばらくが経つ。
今ではほぼ完成。

「お、もうちっとじゃねえか…っし、締めは終わったが、お前さんとこ大丈夫か?」
「へ、あ、やっと完成しました!!」
「よしよし。
 あと俺が確認すっからそこでコーヒーでも飲んどけ」
「ごめんなさい、わざわざ」

私がデータを消えないようにいろいろとしている間に係長がコーヒーを入れてくださったらしい。
ソファの前にある机の上に置かれた湯気の立つコーヒー。
お言葉に甘えて飲んでいると私の目に映る係長。
パソコンの前に立って、不備がないかなど流して確認する。

うんうん、本当相変わらず今日もかっこいい。
泣きそうになったことを忘れて顔が綻んでしまう。
そんな私を見て不審に思ったのか係長が苦笑していた。

「どうした?なんか俺の顔についてっか?」
「ち、違いますっ、何もついてません」
「まあならいいか……で、今はもう11時か」

ふうと息を洩らして、同時に私の頭をぽんと叩いた。

「お疲れさん、よく頑張ったな」
「か、係長…っん」

手の感触に頭を上げると、触れた互いの唇。
状況に付いていけていないけれど、係長に今唇を奪われたのは間違いなく事実。

「っ!?」
「嫌か?」

突然の口付けに、問いかけ。
嫌なはずもなくぶんぶんと首を振ると今度は荒々しい口付けが落ちる。


「ちょっと、係長、あの」
「大丈夫だ、今会社にいるのは俺たちだけだ」

いや、問題はそこじゃなくてっ!
でも答える前に彼の指が私の唇をなぞり黙らせた。

「…名前好きだ」
「え」
「ここに入ってきてからずっと見てた。
 気付くかって待ってても全然気づかねえしよ」
「……私だってずっと係長の事見てましたよ」

一人だけ鈍感扱いされたので、口をとがらせながらそう恥ずかしいことでもあるけれど白状すれば、係長は声を立てて笑った。

「はっはっは、俺としたことがどうしちまったんだろうな。
 あれか、やっぱ恋ってのは盲目になるってやつか?」

そう言いながら私を抱きしめる。
そして甘い声で『俺のものになれ』と囁いた。

はい、と小さく呟いた言葉はわからないけれど係長は私の顔を見ると微笑む。
体を抱き寄せていた手は顎を取り、上をむかせ額に口付けをする。


「好きだ」
「私だって係長の事大好きです」
「係長って…元親って呼べ」
「も、元親さんっ」

素直に名前を呼べば嬉しそうな顔をするもんだから、こちらが嬉しいような、くすぐったいような感じがする。

「ああもう!…んな可愛い顔されると俺も歯止めがきかねえよ、ったく」
「へ、え?」

気付いた時には元親さんにソファの上で組み敷かれていた。

「可愛い…」
「元親さんっ!」
「わかってる、ちゃんと可愛がってもやるから」

手は既に服の中に忍び込んでおり、いたるところを弄ぶ。
抵抗の言葉は発しようとするたびに元親さんに口を塞がれて、手に感じた声が淫猥な水音と共に部屋に響く。

その声に気分がよくなったのか、妖艶に笑いながら元親さんはベルトを外して、すっかり勃ち上がったモノを取り出す。
入る訳がない…その思いで冷や汗が出た気がする。
元親さんは大丈夫だと言うと、慈悲もなく一気に突いた。

「ああぁっ、ん、ばかっ」
「名前の前じゃ仕方ねえって…っ」
「あ、ああ、もとちかさっ、も、だめ」
「っんと、気持ちいいぜ、駄目じゃねえって、な?」

腰を散々に打ち付けられて、理性が飛んでいきそうになる。

「もとちかさんっ、あ、ああぁっ!」
「名前っ」

中で元親さんを締め付ければ、熱いものが注がれた。

「俺だけのものだからな、わかってるな?」

息を整える間もなく抱き寄せられて、そう言われれば頬は勝手に緩んだ。
当たり前だと抱きつけば、力を強められてこれは夢じゃないんだという実感が改めてわいた。




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元親さん押せ押せアニキになっているでしょうか…?
結局裏突入しちゃいました;
長いうえ、口説と言えるのかわからないぐらいだいぶ強引になりましたが楽しんでいただけましたら嬉しいです^^
篝様リクエストありがとうございました!







  


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