第七話

名前を押し倒してしまってからあれから約半月が過ぎようとしていた。
あの日から関係は変わったといえば変わってないし、変わったといえば変わった。
・・・・・・どっちだよ。


普段と接し方は変わってはおらず、普通に挨拶すればむこうもちゃんと返してくれるしおかしなところは無かったろう、周りから見れば。
ただ、前みたいに何気ない会話をしなくなってしまった。
おかげで、この半月・・・言ってみれば、気まずい状態だ。
しかも、今日は7月17日夏季長期休暇前日だ。明日からは会うことさえも叶わなくなっちまう。


片倉先生が夏休みは気を付けて過ごせー、とか言ってる間の俺はとにかく憂鬱で仕方がなかった。
「はー」
ガラにもなく溜息をついてると、通路はさんで隣の政宗がニヤニヤしながら話しかけてきた。

「どうした?」
「どうしたって・・・honeyのことか?」
「はにー・・・?」


「副担任、斎藤名前に決まってんだろうが」

「ーっ!?」

な、なんでこいつ・・・・・・前の教育相談の話聞いてやがったのかよ。

「で、なんであいつを"honey"だのと呼んでる訳だ?」
「ま、いろんな事情もあるんだが・・・あいつは俺のfianceでもあるんだよ you see?」
「な、−」
「別に絶対結婚するわけでもない、だがな・・・−アンタがあいつを生半可な気持ちで好きになってるんなら絶対に奪い取る」

生半可な気持ち?
んなもん、あるわけねぇ。

「残念ながらお前には奪わせられねぇよ」

ま、今ンとこ喋ってんのかって言われたら痛いとこだけどよ・・・。
夏休み、会えるわけじゃねぇし。


「アンタの気持ちはよくわかった。
 明日から俺は毎日会えるわけだがー、元親・・・アンタ、剣道できるか?」
つまり俺にチャンスを与えてくれるってことか?
幸運なことに俺は、名前と離れてからあいつのやってた剣道をし始めた。

理由はあいつよりもっと単純。
”また会う時に強くなってプロポーズするため”

昔からあいつは剣道やってて強かったわけだ。
女としてならずっとそばにいられることはできた。
だが、男としてそばにいるならあいつより強くなきゃならねぇ訳だ。
『私は私より弱い奴には守られたくない』
あいつはそう言って俺にとっては痛い言葉を回してきた訳だ。
その結果がこれだ、今はもうやってはいねぇが6段まではとることはできた。
頑張って連盟に推薦もらえりゃ師範できるくれぇだ。


「oh、やるじゃねぇか。何気俺よりも上か、もったいねぇ。
 で、アンタどうする?
 うちの部で仮師範としてくるか?
 総体は終わったがまだまだ大会はある、小十郎は周り見なきゃなんねぇし、honeyだけじゃ俺と真田の相手は務まらねぇ」
「部員じゃねぇのにいいのか?」
「大会出たけりゃ、書いてもらわねぇとな」
どこかからか入部届を取り出した政宗。
確かに、放課後もずっと堂々と名前といられるのはいいが、正直俺は部活とかに向いてない。
最近は少ないが、この格好のせいか、喧嘩を吹っ掛けられることもあるし、そのせいで停学にもなったこともある。
迷惑かけるのも目に見えてるから、入部に関しては断っておいた。

「俺から小十郎に言っといてやるよ、だから今日の放課後から頼むぜ。
 −、小十郎きやがった」
政宗はそう言い残すなり体の向きを変えた。


こうして、チャンスは与えられたわけだが・・・どうするかな。
夏休みで決着付けようなんか思ってねぇが、これ以上生徒として見られるのも複雑なもんで・・・。

せっかくのチャンスのがしてたまるかぁああ!
剣道すんのなんかだいぶ久しぶりだったりするが、関係ねぇ。
今までの努力が、俺のほうが強いって・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・あいつ、師範できるくれぇなら6段以上・・・俺より上じゃね?

ま、んなこたぁ関係ねぇ。
今から始まったばかりだ。
この西海の鬼の純情な恋心育ててあげようじゃねぇの!








  


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