いつも通りの午後6時

「・・・−い、先輩!!
 もう起きてくれないんですから・・・・・・えいっ」
「ーっ!?何しやがる!?」

不意に首筋に走った痛みによって俺は目を覚ました。
・・・あれ、ここ図書室か?


「先輩、やっと起きましたか」
「名前、おいおい先輩って何の冗談だよ、−!?
 何だその格好・・・」

我がクラスの副担任であり、俺の恋人である名前はうちの学校の制服を着ていた。

勿論、教師が制服を着る理由なんかない。
何度目を擦っても名前はセーラー服を何とも思わずに来ているようだ。

「まさか、政宗の奴に何かされてそんな格好にー」
「私のこの格好がそんなに可笑しいですか!?
 確かに胴着を着なれてて制服の姿を見る割合の方が少ないとは思いますが、そんなこというのはあんまりですよ。
 どうせ私はこの制服が似合わないんですよ!どうせ!!」


・・・・・・あれ、よく見たらちょっと若返ってねぇか?
いや、普通に若いんだが何ていうか・・・いつもより幼い、姿も性格も。

どういうことだ?

そんなことを只管に考えていると不意に名前が机に手ををバンと付いて俺に顔を近づけさせた。

「やっぱり私じゃ満足できませんか・・・。
 今誰のことを考えてるんですか?」

不安そうに俺を見つめる瞳。

「悪い、ボーっとしてた。
 でも、他の奴のことを考えてた訳じゃねぇよ。だから、−!?」

罪悪感に掻き立てられ、安心させてやろうと言葉を紡ぎ”心配すんな”、そう言おうとしたら俺の唇はちゅっ、と音を立てて塞がった。

「たとえ嫌だって言ったって私は離れませんよーだ、チカちゃん?」
「な、」
「私は先輩から離れれませんよ?」

そうやって言う名前が可愛くて、先程の軽い口付けでは物足りなくなって名前の唇を強引に塞いだ。

「ーんぁ、せ、先輩・・・」
「馬鹿野郎、こんな時ぐらい元親って呼べ」
「もとちかっ、」

名前は俺の襟を掴み、手前に引っ張り体の距離を縮めた。

「名前、−」

机に押し倒し、十分に堪能してやろうと・・・したところで



『おりゃあ!』

「ーっ!?」

・・・あれ、ここ図書室か?
今度は先程の物とは比べものにならないくらいの痛みが首を走って俺は完全に目を覚ました。
さっきのは夢だったってか?

今度は少しばかり違う。
目の前にいるのは名前だけど、今度は胴着姿だ。

「長曾我部君、もう下校時刻過ぎちゃったんだよ?
 早く帰らないと怒られちゃうよ」
「あれ、名前なんで・・・」
「なんで、もないよ。
 ほら起きて!!」

俺は剣道部の手伝いも忘れて、その上図書室で下校時刻を過ぎるまで寝てしまってたらしい。
俺が手伝い忘れたせいか、少し名前は怒ってはいないが拗ねているように思える。

「ごめんな、忘れてて。だから、そう拗ねんな?」
「別に私は拗ねてないんだから。長曾我部君は早く帰りなさい」


ぷいとそっぽを向く名前に、先生として接する態度・・・。
やべぇ、可愛い。
此処のところそりゃ毎日一緒な訳だ。
だから、離れてしまった分少し寂しく感じてくれたっつうことか?

「ごめんな、今日はずっと一緒にいるから」

立ち上がって名前を抱きしめて口付けを落とした。

「ちょっ、長曾我部君!?」

瞬時に赤くなっていく名前の顔に胸が高鳴る。

「いつまで拗ねてんだ、ほら元親って呼べ」
「っ、元親のばかぁ」
「ほんと誘い方は巧くなったよな、誰のおかげだ?」
「なっ、私別に誘ってないよ・・・」
「じゃあ無自覚か、なんだかんだで一番破廉恥なのはお前さんじゃねぇか、なぁ?」
「馬鹿!元親のばーかっ!!」

「でもそんな馬鹿を好きになった姫さんは何処のどいつだよ?」
「ーっ・・・」



何も言えなくなって今度は耳まで赤くなる名前に俺は笑みを浮かべる。
いつもとは違って積極的になってくれるのも良かったが・・・


やっぱいつも通りの名前が一番だよな?







晩にたっぷりと仕返してくれりゃいい。
俺にはそれで十分お前さんを感じられんだからな。








  


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